ローカル5G実証のイメージ

 九州電力送配電は九州北部の玄界灘沖に位置する壱岐島(長崎県壱岐市)で、ロボットを活用した内燃力発電所自動巡回の実証に乗り出す。ローカル5G(第5世代移動通信方式)実現に向けた総務省の実証事業に採択されたことを受け、年内をめどに新壱岐発電所(1~4号機、各6千キロワット)に通信環境を構築。巡視点検業務の一部をロボットで代替し、有効性を検証する。ロボットに特殊カメラを搭載し、漏油などを早期検知する独自の試みも予定しており、注目を集めそうだ。

 総務省が実施した2021年度「課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」の公募で、九州電力送配電、正興電機、NTTドコモ、西日本技術開発(福岡市、中村明社長)の4社コンソーシアムの提案が8月末に採択された。

 実証は2022年3月までを予定。新壱岐発電所4号機にローカル5G基地局を設置し、入り組んだ発電所構内で動き回る巡視点検ロボットと、円滑に通信できるかを検証する。

 正興電機がロボットの調達と現場での運用、NTTドコモがローカル5Gに関わる技術支援を担う。西日本技術開発は九州エリアで離島の内燃力発電所の運用管理などを手掛けた知見を生かし、実証中の不具合対応や課題検証の取りまとめを行う。

 正興電機のロボットは3Dレーザーセンサーやメーター識別機能を搭載しており、点検内容、時間、サイクルなどを設定することで自律走行しながら巡視点検できる。

 今回の実証では光を波長ごとに分析、撮影するハイパースペクトルカメラを搭載し、取得したデータを人工知能(AI)で解析する。これにより漏油・漏水などの異常をいち早く検知したり、危険度を判定するシステム構築を目指す。

 ハイパースペクトルカメラを工場などに設置し、製品の品質管理に利用する例は多いが、動き回るロボットに搭載して発電所の状態監視に使うのは国内初の試みとみられる。

 九州本土と系統連系していない有人離島では内燃力発電所が電力供給の主役だが、限られた人員で設備の保守・運転を行うため現場に負担がかかっていた。ロボットによる巡視点検が実現すれば、業務効率化と現場の負荷軽減につながる。

 九州送配電は今回の実証を通じて、ローカル5GとAI解析を活用した巡視点検ロボットソリューションサービスを確立。電力会社にとどまらず、インフラ産業への展開を目指す。

電気新聞2021年9月15日