グリッドサーブが運営するエレクトリックフォーコート

 スイス重電大手ABBが、電気自動車(EV)用充電器の受注を伸ばしている。2010年にEV用充電器市場に参入して以来、85カ国で45万台以上を販売してきた。主力製品は最大350キロワットの高出力充電器「テラHP」で、電動化シフトが進む欧州を中心に設置が進む。近年は電動バス用充電器を提供する事例も増えてきた。

 テラHPは高速道路のサービスエリアやガソリンスタンドなど、短時間での充電が求められる場所で数多く設置されている。車種や電池容量にもよるが、8分程度で走行距離200キロメートル分の充電が可能だという。

 ABBはこのほど、EV充電サービスを手掛ける英国グリッドサーブ向けにテラHPの納入を始めた。グリッドサーブが運営するEV充電スタンド「エレクトリックフォーコート」に順次設置する。充電器の数は300~600基に上り、ABBとして大型の受注案件だ。

 グリッドサーブは英国の幹線道路沿いに、エレクトリックフォーコートを100カ所以上整備する計画。1カ所当たりEV36台を同時に充電できるという。ABBは他にもグリッドサーブから英国内のEV用充電器(同60キロワット)300基の更新業務も請け負う。納入完了時期は25年を予定している。

ABB製の電動バス用「オポチュニティ充電器」

 一方、電動バス用充電器は停留所の屋根から充電する「オポチュニティ充電器」の引き合いが増えている。オポチュニティ充電器はシンガポールやドイツのハンブルク、イタリアのミラノなどで提供してきた。

 今年7月にはカタールの交通会社モワサラットからもオポチュニティ充電器を受注した。充電器の総数や納入時期は明らかにしていないが、合計出力は12万5千キロワットに達するという。

 同国運輸省は路線バスについて、サッカーワールドカップが開幕する22年までに25%、30年までに全てを電動化する計画。電動バス用充電スタンドも同国内に41カ所設ける予定だ。ABBは地下鉄12駅やバス停4カ所などに設ける充電スタンドの設計も手掛ける。

 ABBはEV用充電器の販売を伸ばしてきた理由に「メンテナンスや運転開始後のアフターサポートを充実させ、顧客満足度を高めている」ことを挙げる。ABBは自社の拠点を活用して、納入した充電器を24時間、遠隔監視している。

 さらにモワサラット向け案件では、ABBのクラウドサーバーにバス運行管理システムを接続。充電器の稼働データを踏まえて、電動バスの運行と充電計画を最適化するシステムを構築するという。こうした機器売りにとどまらない付加価値の提供が受注拡大につながっているといえそうだ。

電気新聞2021年8月26日