在宅勤務の拡大で昼間時間における家庭の電力使用量が増加している

 電力中央研究所は、新型コロナウイルス感染拡大により、1年間の家庭用電力需要が1世帯当たり4%増加したとする研究結果をまとめた。関東エリア1都8県の約1万2千世帯分のスマートメーターのデータを抽出。2020年3月~21年2月の平均年間電力需要の変化を調べた。その結果、コロナ禍前の年間平均需要の約3700キロワット時から146キロワット時増加した。

 新型コロナによる電力需要への影響分析は月間値に基づいた調査などが行われているが、平日や休日、時間帯別の違いを含めた家庭用電力需要に関しては十分ではなかったという。そこで電中研では気象などによる影響も考慮した上で電力需要の変化を比較。1万1925世帯に設置されているスマートメーターから、17年1月~21年2月にわたる約4年間分の利用データを分析した。

 分析では20年4月、8月、21年1月の時期に変化が顕著だった。コロナ禍前の需要構造と気象情報から算出した新型コロナが流行しなかった場合の月平均の推定値と比較した結果、4月の増加率は約8%。1年間の中で最も高い増加率だった。日中、特に午前11時~午後2時までの増加率は20%を超えていた。さらに4月~6月頃までは午前6時台の電力需要が5%前後の減少傾向がみられ、在宅勤務などによる起床時間の後ろ倒しの影響が示唆された。

 20年8月も同様の推定値から比較し、全体の増加率が約5%。正午~午後4時の月平均は約10%増加した。在宅勤務の継続などによる冷房利用増が要因と推察している。21年1月も全体増加率は約5%。午前11時~午後5時の電力需要の増加率は約10%を超え、特に夕方の増加率が目立った。同じく在宅率の増加に伴う暖房利用増と、日没による照明利用などが要因と推定している。

 結果について、電中研社会経済研究所の西尾健一郎上席研究員は「約1年間の短期的影響。今後も動向を注視する必要がある」と強調。その上で「家庭用需要は増加したが産業用などの減少は大きい。オフィスや自動車などでの移動によるエネルギー消費を含めた全体を見渡した影響評価が必要」とした。

電気新聞2021年8月24日