バイパスケーブルの取り付け作業。引き込み線のヒューズ切れによる停電を約10分で借り復旧する

 北海道電力と音羽電機工業は低圧引き込み線のトラブルで停電が起こっても約10分で仮復旧できるバイパスケーブルを実用化し、4月下旬までに北海道電力ネットワークの全47事業所に配備した。屋内配電線への適用拡大や道外への販売も視野に入れている。低圧配電設備の中でも、引き込み線につける保護装置「電線ヒューズ」を原因とする停電の割合は高い。バイパスケーブルは故障した電線ヒューズをまたぐ形で簡単に取り付けられ、迅速に仮復旧できる。

 北海道電力総合研究所が配電工事現場のニーズを踏まえたバイパスケーブルの試作品を2019年度に開発。北海道電力が同ケーブルと工法の特許を取得し、音羽電機工業が20年度に製品化した。20年11月末から全道にある北海道NWの事業所に配備を始め、今年4月に完了した。

 電柱から住宅に電気を送る引き込み線には電線ヒューズが取り付けられている。短絡事故で引き込み線に大電流が流れた時などにヒューズの中身が溶けて他の電線や設備への事故の波及を防ぐ。発生した停電を解消するには電線ヒューズを新品に換える必要があり、作業に40分から1時間40分ほどかかる。

 総合研究所の調べでは、道内で16~18年度に起きた低圧配電設備が起因となった停電件数のうち、引き込み線の電線ヒューズ切れが6割弱と最も高かった。電線ヒューズの交換には時間がかかるため、先に短時間で仮復旧させることが必要と判断。約10分で仮復旧できるバイパスケーブルを製品化した。

北海道電力ネットワークの全事業所に配備したバイパスケーブル 。ケーブル中央には防水ケースに収納したブレーカーがあり、短絡電流が流れても安全に遮断できる

 このケーブルは両端の接続体をねじで締めるだけで引き込み線に取り付けられ、最低10回は再利用できる。ケーブル中央にはブレーカーがあり、仮に短絡電流が流れても安全に遮断する。ブレーカーは防水ケースに収納しており、悪天候でも使用できる。

 19年に起きた台風15、19号の被害を踏まえた電力システムのレジリエンス(強靱性)強化に関する国の審議会は、設備の完全復旧よりも早期の停電解消を優先。仮復旧を徹底するよう一般送配電事業者に求めた。一般送配電事業者の災害時連携計画にも仮復旧工法の実施が盛り込まれている。北海道電力はバイパスケーブルがこういった方針にも沿う製品とみて、全国への普及拡大を目指す。

電気新聞2021年8月13日