これから4回にわたり、2020年9月より進められている「次世代スマートメーター制度検討会」における仕様決定に関する視点と論点を紹介しながら、急ピッチで進むエネルギーシステムの革新、新たなサービス創出との関連について述べる。今回は、14年から本格導入が始まった現行のスマートメーターの仕様と果たしてきた役割、この間のエネルギー分野の変化や新たな要請を総括し、今年2月に決定された次世代スマートメーターの仕様について紹介する。

 電力やガスのメーターによる需要家の使用量の検針を情報通信技術によって、遠隔化・自動化・デジタル化することのメリットは長らく議論されてきたが、主にコストの問題で実現しなかった。しかし、エレクトロニクスの性能飛躍・価格低下による社会への急速な浸透と、省エネ・低炭素社会実現のため需要家のエネルギー情報把握・行動変容やエネルギー使用情報を活用した新サービス創出を目的に、2011年2月、電力・ガスのスマートメーターを20年代の可能な限り早期に全ての需要家に導入すること、ならびにスマートメーターが有する機能と仕様が決められた。先行する電力では、23年度に全需要家に初代スマートメーターが設置完了予定であり、ガスや水道のメーターにおいてもスマート化が進められている。
 

A・B・C、3ルートで提供

 
 初代電力スマートメーターと関連システム、ならびに基本的機能をに示す。

 スマートメーターは一般送配電事業者が所有し、需要家の電力使用量の30分値を計測、この検針値を通信網を通じてHES・MDMSに送信する(図のAルート)。一般送配電事業者は、小売事業者ごとにそれぞれの顧客需要家の検針値を1時間以内に送信する。計測粒度の30分は需要家のエネルギー使用状況の把握に必要な水準として決められたが、電力卸売市場の取引の時間コマと一致していることが本質的に重要であり、デマンドレポンスの実施や市場と連動した料金メニュー提供などの土台となっている。

 スマートメーターは需要家内へのデータ通信機能を有しており(図のBルート)、HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)などからの求めに応じて電力使用量などを需要家に通知できる。

 また、小売事業者は料金請求だけでなく、インターネットを通じて時間帯別電力使用量のグラフ表示や省エネルギーコンサルティング等のサービスを提供している(図のCルート)。

 11年以降、東日本大震災と関東地方の計画停電、再生可能エネルギー(再エネ)固定価格買取制度施行と太陽光発電の導入拡大、電力システム改革による小売・発電全面自由化と容量市場・需給調整市場の整備、台風・集中豪雨による長時間停電、2050年カーボンニュートラルの目標化など、電力・エネルギーを巡る大きな動きや経験があり、需給一体による再エネ主力電源化や分散エネルギーリソースの活用促進、レジリエンス向上などが近未来の重点事項になっている。
 

強靱性など次世代型の検討開始

 
 このような中、初代スマートメーターの検定満了が発生する24年度からの導入を目指して、資源エネルギー庁は、関連事業者・メーカー・有識者からなる「次世代スマートメーター制度検討会」を開催し、仕様の検討を行った。上記の動向を踏まえ電力分野のデジタルトランスフォーメーションを推進する観点から、一般送配電事業者、発電・小売・エネルギーサービス事業者、ガス・水道事業者など、各ステークホルダーに求められる行動とスマートメーターに期待される役割を想定し、便益の評価を行うとともに20年後以降の将来や海外展開なども視野に入れ、今年2月に「次世代スマートメーターの標準機能」を公表した。


 主な内容として、レジリエンス(強靱性)の強化の視点から停電の警報の送信、再エネ接続可能量拡大・送電ロス低減のため有効・無効電力量/電圧の5分値を計測し数日以内に取得、電力市場の取引単位の15分化への対応、Bルートによる有効電力量1分値の取得が盛り込まれた()。次回以降、これらの内容と論点・展望をみていく。

【用語解説】
 ◆HES(Head End System)
データ収集、通信制御を行う装置。

 ◆MDMS(Meter Data Management System)
スマートメーターデータを集積・管理し、サービス化するシステム。

電気新聞2021年5月17日