基本協定書を結んだ3者の代表者(写真左から野本・関電工専務執行役員、田母神博文・関電工常務執行役員・千葉支店長、太田洋・いすみ市長、四元・東電PG木更津支社長)

 関電工と千葉県いすみ市、東京電力パワーグリッド(PG)木更津支社(四元善治支社長)は15日、同市内の一部エリアで地域マイクログリッドの構築事業を開始すると発表した。このほど、3者で基本協定書を結んだ。事業では災害拠点となる施設に太陽光やLPガスエンジン発電機などを設置。非常時には系統から切り離し、エリア内に電力を送る。関電工は配電事業への参入を表明しており、この事業を通じて収益性や発電設備の改善点などを検証する。

 同日いすみ市内で開かれた会見で、関電工の野本健司専務執行役員・戦略事業ユニット長は「今回の事業での投資回収は考えていない。まずは地域マイクログリッドの先進事例をつくり、知見を高めていきたい」と強調した。

 同事業では非常時に限り主要系統から配電網を切り離し、域内の分散型リソースで電力供給を賄う。具体的には、いすみ市の指定避難所である大原中学校に太陽光設備(185キロワット)と関電工が開発を進めるLPガスエンジン発電機(50キロワット×2台)、蓄電池を設置する。防災拠点のいすみ市役所にも太陽光設備(75キロワット)を置く。事業投資額は約7億円。

 非常時には2拠点を取り囲むエリアでマイクログリッドを形成する。需要家は約30軒。平時はそれぞれ導入した分散型リソースを活用し、ピークカットや自家消費を通じた電力料金の低減などに役立てる。逆潮流は行わない。

 今回の設備構築事業は6月末に経済産業省の補助事業に採択された。2023年1月までに完了させ、同年2月から運用を始める予定だ。

 来年4月に制度化される配電事業ライセンスを巡り、関電工は取得第1号を目指している。今回の事業で収益性が確保されるか、LPガス発電機のブラックスタート電源としての性能が発揮されるかなどを見極める考え。

電気新聞2021年7月16日