政府の成長戦略会議(議長=加藤勝信官房長官)で2日示されたグリーン成長戦略改訂案から、原子力発電を「最大限活用していく」との表現が削除されたことを巡り、関係閣僚の見解に微妙な温度差が生じている。梶山弘志経済産業相は4日の閣議後会見で、原子力活用に関する「(政府の方針を)変えたということではない」と指摘。一方、小泉進次郎環境相は閣議後会見で「再生可能エネルギー最優先の形でカーボンニュートラルの実現に向かう」ことが現政権の方針だと主張した。

 昨年末に策定されたグリーン成長戦略では冒頭、原子力を確立した脱炭素技術と位置付けた。その上で「可能な限り依存度を低減しつつも、安全性向上を図り、引き続き最大限活用していく」との方向性を示していた。

 ところが2日に発表された改訂案では「可能な限り依存度を低減しつつ」という部分は同じだが、「最大限活用」の文言は消え、「原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、再稼働を進める」といった文章に変わった。

 梶山経産相は4日の会見で「(政府の)方針を変えたということはない」と述べた。「協議の過程で各省から様々な意見を頂き、現時点では現行の第5次エネルギー基本計画の表現を正確に追うこととした」と説明。「今後の原子力を巡る内閣の方針については、エネルギー基本計画見直しのプロセスの中で議論することで合意した」とした。

 さらに昨年末に公表したグリーン成長戦略については、経産省が各省と議論して取りまとめたものの「関係省庁連名の文書ではなかった」と説明。その上で、2日に示された改訂案は、昨年末と異なり「各省連名のクレジットで作成する文書」と、表現変更の経緯を話した。

 一方、小泉環境相は「菅義偉首相がなぜカーボンニュートラルを宣言したかというと、原子力を最大限活用するためではなく、再生可能エネルギーを最大限導入し、再生可能エネ最優先の原則で進めるためだ」と主張。「エネルギー政策を所管していないが、気候変動政策の全体を取りまとめる立場として必要な意見は常に申し上げてきた」とも述べた。また、「再生可能エネ最優先の形でカーボンニュートラルの実現に向かい、国家を自立させるのが菅政権の方針だ」とも強調した。

電気新聞2021年6月7日