脱炭素社会実現の鍵としてモビリティーの電動化が挙げられるが、電力エネルギー分野との連携やエネルギー×モビリティーのプラットフォーム構築など、eモビリティーの普及拡大に向けた一層の取り組みが必要な局面を迎えている。モビリティーの電動化は移動の利便性や生活の効率化・電化などスマートシティー形成にも大きな影響を与えることとなる。第1回では、国内外の代表事例からスマートシティー×eモビリティーの特徴や可能性を抽出してみたい。
 

欧州46都市が参加するプロジェクトと3つの観点

 
 電源の低炭素化が先行し、それに伴うモビリティーの電動化の取り組みも活発となってきている欧州では、スマートシティー・コミュニティー・ライトハウス(灯台)・プロジェクトが実施されている。14のプロジェクトに46の都市が参画し、セキュアで安価でクリーンなエネルギー、スマートなeモビリティー、スマートなツール・サービスの3つの観点からプロジェクト間連携や知見共有が行われている。これらの観点はスマートシティーを形成する上で最重視されていることが分かる。


 
 14のプロジェクトの一つ、ロンドン、ミラノ、リスボンで実施されているシェアリング・シティーでは、eモビリティーとしてeカー、eバイク、eカーゴバイク向けのシェアリング・プラットフォームが開発・展開され、シェアリングに対応するスマートパーキングや充電スタンドを備えたスマート街灯など、スマートシティーを意識した公共インフラ整備も検討されている。ライトハウス・プロジェクトのウェブサイトには他にもeモビリティーを活用したスマートシティーの姿が様々に示されている。
 

日本でもスーパーシティ構想などが始動

 
 日本においても、エネルギー・交通・行政・医療・教育など人々の生活全般にわたる“まるごと未来都市”を志向し、都市OSやデータ連携基盤構築も包含する「スーパーシティ構想」(2021年春から5地域程度)、地域の移動の課題解決のため新たなモビリティーサービスを社会実装してゆく「スマートモビリティチャレンジ」(52の実証地域)、自動運転の多目的車両である、e―Paletteなど先進のeモビリティー活用により人・モノの移動を最適に効率的に運用するウーブン・シティなど、eモビリティーがスマートシティーで活躍するステージが用意されている。欧米で実証・実用が盛んになりつつあるeトラックやeバスについても、スマートシティーにおける物流MaaSやマルチモーダルMaaSの枠組みで、今後検討が進んでいくであろう。

 著者も委員として参加している内閣府戦略的イノベーション創造プログラム「IoE社会のエネルギーシステム」では、eモビリティーが普及した地域やコミュニティーの中での再生可能エネルギー利活用やエネルギー需給への影響、エネルギーを持ち運ぶことによる電力レジリエンスへの貢献など、eモビリティーとエネルギーシステムとの関わりについても議論しているところである。
 

エネルギー、行政サービス、インフラを繋ぐeモビリティー

 

 
 最後に、ここまで紹介した順に紹介したキーワードをプロットすることで、eモビリティーを核としたスマートシティーの姿を図に描いてみたい。eモビリティーは利用者からの受容や充電インフラ拡充の課題はあるものの、利便性・効率性・環境性に加えて、エネルギー(IoE)・情報(ITS)の端末としての性質も加味すれば、スマートシティーの様々なサービスとの連携をつかさどるキーコンポーネントとしての役割を担うことが期待されよう。

【用語解説】
◆スマート街灯 
LED街灯、WiFi基地局、環境センサー、交通流センサー、太陽光発電、デジタルサイネージ、eモビリティー用充電器などを一体化した多機能な街灯。

◆都市OS 
人々の生活、都市のインフラ、気象や地形などに関わる様々なデータを分野横断的に取り扱い、かつ、多彩な都市へ横展開可能な、都市を運営するためのプラットフォーム。

◆IoE(Internet of Energy)
社会 エネルギーの供給情報、消費情報がインターネットにより結合されエネルギーの需要と供給の双方が管理される社会。エネルギー&情報端末としてのeモビリティーは、エネルギーマネジメントの中核を担う可能性を持っている。

電気新聞2021年1月18日