沖縄を除く一般送配電事業者9者と送配電網協議会は17日、需給調整市場の運営を担う「電力需給調整力取引所(EPRX)」を設立したと発表した。これまで一般送配電事業者はエリアごとに公募で調整力を調達してきたが、2021年度から順次、同市場での広域調達に移行していく。まず3月31日から45分以内の応動などを要件とする「3次調整力(2)」の初入札を実施。エリアを越えた調整力の取引で効率的な需給運用を目指す。

 EPRXは任意団体で、一般送配電事業者9者が組合員となる。契約・精算といった市場運営に関する業務を担う一方、参加申し込みや問い合わせ受け付けなどの一部業務は送配電網協議会に委託。取引実績などの情報も同協議会ホームページで公表する。

 需給調整市場の設計は、電力広域的運営推進機関(広域機関)の有識者会合などで検討を進めてきた。エリアごとだった調整力の調達を広域化することで、全体の必要量とコストを低減する目的がある。これを達成するため、一般送配電事業者各社は広域需給調整システムを開発し、昨年から適用エリアを拡大してきた。まもなく北海道エリアが加わり、9エリアで本格運用の準備が整う。

 17年度から公募で調達してきた調整力は、一般送配電事業者が専用で使う「電源Ⅰ」、小売事業者の供給余力などを活用する「電源Ⅱ」といった区分だった。

 需給調整市場では指令を受けてからの反応速度(応動時間)などに応じて1次~3次調整力(2)まで5つの商品に分かれており、公募と区分が変わる。ただ、21年度の市場開設時点で取引が始まるのは、最も低速の3次調整力(2)のみ。22年度には3次調整力(1)が加わり、24年度に全ての商品がそろう予定だ。

 23年度までは現在の調整力公募の枠組みも継続し、段階的に需給調整市場での調達に移行していく。3次調整力(2)は、主に再生可能エネルギーの出力予測誤差に対応する調整力。日本卸電力取引所(JEPX)のスポット取引終了後の正午~午後3時に翌日分の入札と約定処理を行う。初回4月1日分の取引は3月31日となる。

 昨年には容量市場の初入札で24年度の供給力(キロワット)が確保された。24年度には需給調整市場の商品がそろい、発電機などを出力調整できる状態に保つ権利(デルタ・キロワット)も公募から市場取引による調達へと移行する。

電気新聞2021年3月18日