水素バリューチェーン推進協議会は、水素社会実現に向けた政策提言をまとめた。需要拡大と安価な供給が提言の柱。需要側では、二酸化炭素(CO2)削減効果が大きい水素発電の重要性を指摘し、需要拡大に向けた法令整備を要望。供給側では、海外事業者を巻き込んだ大規模サプライチェーン構築に加え、高温ガス炉による国内製造などを提言した。グリーン成長戦略で掲げた「2030年に需要最大300万トン」達成に向け、今後は協議会側でも需要拡大に向けた方策を検討する方針だ。

 同協議会はエネルギーやメーカー、金融などで構成され、昨年12月に発足。各電力も参画している。事務局を務める岩谷産業、トヨタ自動車、三井住友フィナンシャルグループの3社が16日、梶山弘志経済産業相に提言を手渡した。

 水素は原料や製造、輸送方法などによってCO2排出量が異なる。協議会は原料や製造方法にとらわれず、バリューチェーンでのCO2排出量を基準とするよう求め、カーボンフリー水素の定義明確化を提案。その上で、水素産業が立ち上がるまでの間は、CO2排出が多い水素も政府の支援対象とするよう要望した。

 需要拡大に向けて、電力部門では水素と化石燃料の経済性を等しくする制度設計を要望し、事業者による合理的判断で水素が選択されるよう提言。具体的には、エネルギー供給構造高度化法で定める非化石エネルギー源への追加などを要望した。その際、化石燃料による水素製造過程のCO2を、CCUS(二酸化炭素回収・利用・貯留)で処理する「ブルー水素」についても非化石エネルギーとして扱うよう求めた。

 安価な水素調達実現は、海外を巻き込んだ大規模サプライチェーンの構築などで対応する。資源国が行うCCUSを活用した水素製造事業への補助など、商用化に向けた海外プロジェクトへの支援を提言した。また、水の電気分解の効率向上や高温ガス炉などの技術開発支援なども求めた。

電気新聞2021年3月17日