◆家庭の省エネ実績、累計270億キロワット時に/ビッグデータで提案最適化
◇パワーソリューション日本・アジア太平洋地域責任者 マシュー・マイヤー氏に聞く

――社会の脱炭素化に対し、オラクルはどのように貢献してきたか。
「脱炭素化の実施対象は大口の需要家になりがちだが実現するには家庭も参加するプロセスが欠かせない。当社は10年以上にわたり家庭の省エネ化に向けた行動を促すソリューションを提供し累計270億キロワット時の節電を達成した。これは乗用車の二酸化炭素(CO2)排出量420万台分に匹敵する数値だ」
――日本の電力業界をどうみる。
「電力小売り全面自由化から約5年が経過し、面白い時期を迎えている。特にスマートメーターデータを活用した高齢者向けの見守りサービスや外出を促して家庭の消費電力を減らす取り組みなどを注視している。脱炭素化についてはエネルギーの供給側に焦点が当たっているものの需要側の役割についてあまり考えられていないように思う。家庭に対しては電化製品や電気自動車(EV)、HEMS(エネルギー管理システム)の活用を進める必要がある」
――日本の電力小売事業者に対し、オーパワーを訴求したい点は。
「当社は10億件のスマートメーターの検針データを日々、サーバーに格納している。データ量では世界に類をみない規模だ。このビッグデータをオーパワーの人工知能(AI)に学習させることで新製品やサービスのコンセプトを早期に最適化できる」
「当社はビッグデータとAIに加えて行動科学の知見もある。これらを活用し需要家の行動変容を誘発できる。具体的にはデジタルチャネルの活用や電化製品の買い換え、ウェブサービスへの登録などが挙げられる」
――オーパワー導入で効果があった事例は。
「米国中西部のエネルギー事業者向けに高額請求が届いた顧客に対してエネルギーの使用状況をオンラインで診断する仕組みを構築した。全顧客の約6%がアドバイスに回答し、使用状況に合わせた節電策を提示した」
「別の事業者に対してはガス給湯機から電気給湯機へ買い換えるキャンペーンを支援した。具体的には1分半程度のビデオメッセージを添付したメールを供給エリア内の3万人に送ったが、メッセージの内容を顧客によって変えている。以前の買い換えキャンペーンに比べてメッセージのクリック率は12倍、電気給湯機に対する顧客の関心は10倍高まったことを確認している」
――今後のオーパワーの開発方針は。
「バージョン3となる新たなプラットフォームをつくっている。既に試験運用を始めており、顧客満足度の増加を確認している。データで得られた分析した結果をより簡単に使えるようにする機能や電力小売事業者の収益化に寄与するAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)、プラットフォームの拡張についても開発中だ」
<参考url>オラクル「オーパワーソリューション」
https://www.oracle.com/jp/industries/utilities/products/what-is-opower.html