奥秩父線鉄塔付近を飛行するドローン。あらかじめプログラミングされたルートを飛行した

 東京電力パワーグリッド(PG)、NTTデータ、日立製作所、中国電力ネットワークが出資するグリッドスカイウェイ有限責任事業組合(紙本斉士CEO)は12月16日、架空送電線点検を模擬したドローンの目視外飛行に関する実証試験を埼玉県秩父市で実施した。東電PG奥秩父線(15万4千V)4~8号鉄塔間の約1.7キロメートル上を自動飛行。機体に搭載したカメラを使い送電線の映像を送信し、東京・虎ノ門の同組合オフィスで確認した。

 実証内容はドローンの目視外飛行(レベル3)。飛行ルートは奥秩父線の鉄塔が並ぶ水資源機構浦山ダム沿岸の山間部。航行ルートは谷が多く、地表から150メートル以上の空域が3カ所あるため航空局の許可を得た。自律制御システム研究所(ACSL、東京都江戸川区、太田裕朗CEO)の機体を使った。

 ドローン飛行は航路ルートのプログラミングによって自動で実行。撮影区間の鉄塔に風速・風向などの計測器を設置し、風況を確認した上で飛行を判断した。前日の15日は風速7メートル程度の風を確認。日本気象協会の評価を考慮した上で飛行延期の判断に役立てた。

 グリッドスカイウェイはドローン目視外飛行の実現に向けた航路プラットフォーム構築を目的とした事業組合。人間による送電設備の巡視点検や線下樹木の測量、災害時の被害状況把握などをドローンで代替し、安全な点検や業務の生産性向上に役立てる。他インフラや他業種での利活用にもつなげ、東電PGは外販拡大も視野に入れる。

 保守管理エリアが広大な東電PG熊谷支社にとってドローンは期待の高いツール。秩父方面の送電線点検には現場への移動時間がかかる。急斜面を登っての巡視は保守員にとって労働負荷がかかる上、業務に充てる時間が短い。秩父市とは災害協定も結んでおり、熊谷支社はドローン自動飛行による業務効率化が欠かせないとみている。

 同組合は11月に中国NWエリアでルーチェサーチ(広島市、渡辺豊社長)製のドローンによる同様の実証を行っている。

電気新聞2020年12月17日