川崎重工業は12月11日、同社神戸工場(神戸市)で建造していた世界初の液化水素運搬船の命名・進水式を現地で開いた。オーストラリアから日本に液化水素を輸送する新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の実証に活用する船舶で、「すいそ ふろんてぃあ」と命名。命名後は支綱を切断して進水した。今後は同社播磨工場(兵庫県播磨町)まで移動し、液化水素貯蔵タンクや配管などを据え付ける。20年秋頃の竣工を予定する。
NEDOの実証事業は2015~20年度までで、同社やJパワー(電源開発)などで構成する「技術研究組合CO2フリー水素サプライチェーン推進機構」(理事長=原田英一・川崎重工執行役員)が、運営を担っている。
輸送する水素は、Jパワーがオーストラリアの褐炭を用いて同国ヴィクトリア州ラトロブバレーのガス化プラントで製造。その水素をメルボルン近郊の港湾に設けた液化基地で液化し、20年度内に神戸市の荷役基地まで海上輸送する予定。
輸送された水素は、神戸市内に設けたLNG(液化天然ガス)と水素の混焼が可能な発電設備での使用を想定している。
進水式は運搬船建造における大きな節目。神戸工場で記者会見した川崎重工の西村元彦准執行役員・水素チェーン開発センター長は、「15年度から液化水素の輸送を検討し、9合目まできた感じ。今後も気を緩めずに20年度の輸送を実現したい」と語った。
式典には、Jパワーの北村雅良会長ら関係者のほか、神戸市民など約4千人が参加。計画通りの竣工を祈念した。
今後、運搬船に据え付ける液化水素貯蔵タンクの容量は約1250立方メートル。川崎重工は液化水素運搬船の商用化には、4万立方メートル級の水素貯蔵タンクが必要と試算している。タンクの大規模化に関する研究もNEDOと推進しており、大量輸送を実現し、水素価格の低減に寄与する考え。
電気新聞2019年12月12日
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