電力広域的運営推進機関(広域機関)は21日の有識者会合で、電力需要が上振れして経年火力・原子力のリプレースが行われない場合、2050年に最大8300万キロワットの供給力が不足するとの見通しを示した。不確実性も考慮した複数の電力需要想定に対し、一定の供給信頼度を満たす予備率を確保できるか試算した。一方、火力の供給力を確保できても設備利用率の低下が見込まれるため、更新や維持の投資を促す方策が課題となる。
「将来の電力需給シナリオに関する検討会」(座長=大橋弘・東京大学大学院教授)で、これまでの検討を基に事務局が40年、50年の需給バランスの概算を示した。

広域機関は電力需要について40年で2つ、50年で4つモデルケースを想定。それぞれ原子力、火力でリプレースが行われる場合、行われない場合など大小2ケースを組み合わせ計20のモデルシナリオを用意した。概算バランスは夏季・冬季の昼間・夜間と4断面で分析している。
予備率は25年度供給計画のうち、最終年度となる34年度の供給信頼度基準に対応する13.9%を参照。これに対する供給力の過不足を示した。8300万キロワットの不足は、50年に需要が1兆2500億キロワット時と最も大きくなる場合で経年火力・原子力のリプレースがなく、需給が厳しい夏季・夜間の断面で評価した極端なケースとなる。
ただ、50年の需要が最も小さい9500億キロワット時で、原子力のリプレースを織り込んだケースでも、経年火力のリプレースがなければ3760万キロワットが不足する見込み。需要が1兆2500億キロワット時のケースは火力・原子力のリプレースを織り込んでも、予備率13.9%は下回る。
また広域機関は電力量(キロワット時)の需給バランスも示した。予備率13.9%を確保した場合でも、再生可能エネルギーや原子力の発電電力量を考慮すれば、火力の設備利用率は34~45%にとどまる。リプレースしても電力量ベースで採算を確保するのは困難と想定され、何らかの政策措置を講じる必要がありそうだ。将来シナリオに関する検討会は、来月にも開く次回会合でとりまとめる予定。
電気新聞2025年5月22日