スペイン、ポルトガルで起きた大規模停電は1日までにほぼ復旧した。停電に至った詳しい経緯は明らかになっていないが、専門家の間ではスペイン国内での送電設備のトラブルを主因とする見方がある一方、イベリア半島の系統の脆弱性を指摘する声も上がる。両国は全電源に占める再生可能エネルギーの割合が多く、送電線事故を端緒として、電源の連鎖脱落を起こした可能性もある。

 海外電力調査会の調べによると、4月28日午後12時半頃、スペインとポルトガルで大規模停電が発生。スペインの送電系統運用者のレッド・エレクトリカが公開する需要カーブをみると、同時刻に国内の需要が約2700万キロワットから約1200万キロワットに急減したのがわかる。供給力も一気に低下。周波数の乱れを検知し、UFR(周波数低下リレー)が動作したとみられる。

 スペイン、ポルトガルいずれも停電は現在ほぼ復旧している。停電発生時、スペインでは4基の原子力発電所が稼働していたが、全基安全に自動停止したという。

 停電の詳しい原因は分かっていないが、4月は電力需要の端境期で、需要が急増して需給バランスが崩れた可能性は低い。東京電機大学の加藤政一名誉教授も「夏の猛暑時でなければ、需要増が引き金になるとは考えにくい。供給側のトラブルが要因だろう」と理由を推し量る。

 欧州ではメッシュ状に複雑に送電網が張り巡らされている。電力融通がしやすい利点がある一方、フランス・スペイン間は連系線が1ルートで接続されているのみ。複数の連系線を持つドイツなどとは違い、何らかの事故で系統から切り離されると、“陸の孤島”になりやすいとの指摘もある。

 スペインでは再エネ電源の比率が全体の5割以上を占める。一般的に再エネ(インバーター電源)が増え、火力など同期電源が減るタイミングで系統事故が起きると、慣性力や同期化力を持たないインバーター電源の停止によって周波数が大幅に低下。同期電源を含む連鎖脱落に至り、大規模停電を引き起こす可能性がある。

電気新聞2025年5月2日