◆HP蓄熱セが調査

 ヒートポンプ・蓄熱センター(小宮山宏理事長)は26日、ヒートポンプ技術について、投資額の約2倍の経済波及効果が得られるとする調査結果を公表した。2023~30年度の期間で新たに導入される機器の累積コストが4兆8700億円となるのに対し、一般的に経済波及効果と呼ばれる「生産誘発効果」は9兆8400億円となった。高い国内生産率が特徴のヒートポンプ機器への投資は、大きな波及効果が見込め、日本の産業競争力強化や経済成長に貢献することを明らかにした。

 国内では「GX(グリーントランスフォーメーション)推進戦略」などに基づき、GX実現と産業競争力強化に向けた投資促進策が進んでいる。一方、投資対象が海外依存度の高い技術の場合、競争力強化に寄与せず、投入した資金が海外に流出してしまう可能性がある。

 こうした中、ヒートポンプ技術は製品自体の国内生産率が高く、主要な部品の国内調達率も高い。さらに機器本体の施工や工事なども発生することから、投入額に対する国内還流率が高く産業政策面からも有効と考えられるため、同センターは調査を実施した。

 調査では、国内主要メーカーへのヒアリングに加え、文献や資料からサプライチェーン構造やコスト構造、国内調達比率を調査。これらを基に、産業連関表を用いて経済波及効果を分析した。

 対象機器は、家庭用ヒートポンプ給湯機(エコキュート)、業務用ヒートポンプ給湯機、産業用ヒートポンプの3種類。比較対象として、定置用蓄電システムについても同様の調査を行った。

 その結果、23~30年度の生産誘発効果は投資額の約2倍という高い数値が得られた。段階別の効果は、原材料調達~製造・生産の3兆5200億円、設置・施工の3兆4千億円の順に大きかった。一方、定置用蓄電システムの効果は投資額の約1.2倍の1兆9600億円だった。

 生産額から原材料などの中間投入を除いた正味の経済波及効果を表す「粗付加価値誘発額」も算出。ヒートポンプ技術は投資額の約1.1倍となる5兆1400億円、定置用蓄電システムは投資額の約0.6倍の1兆400億円の効果が得られることを確認した。

 同センターは、ヒートポンプ技術への投資が脱炭素だけでなく、国内産業競争力強化にもつながることから、支援の加速が期待できると見る。加えて、設置・施工分野の担い手は地域の事業者のため、中小企業への波及効果も大きいと指摘する。

電気新聞2024年11月27日