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 フィンテックを語る上で、最近話題になることが多いブロックチェーンについて言及することは避けて通れない。そのテクノロジーの仕組みや類型などは複雑であるが、代表的な利用はビットコインなどの仮想通貨である。しかし、近年はこうした金融商品の取引にとどまらず、様々な資産取引にも応用が試みられている。エネルギーもその一つとして世界中で様々な実証が進められているが、最終回はこのブロックチェーンの現状と課題を取り上げたい。
フィンテックとエネルギー 第3回 1
 

台帳の分散管理で改ざん防止や管理コストを低減。契約自動執行も

 
 ブロックチェーンは仮想通貨ビットコインを支える基盤技術で、従来の技術ではなし得なかった画期的な非中央集権型システムであるが、ビットコイン交換所であるマウントゴックスが2014年に経営破綻するまではネガティブな印象が世界に広まっていた。しかし、その直後のフィンテック興隆を受け、ブロックチェーンはフィンテックの中核的技術として再び注目を集めている。

 ブロックチェーンは「帳簿(台帳)のイノベーション」とも呼ばれ、帳簿(ブロック)が鎖(チェーン)で時系列につながるイメージがその名前の由来であるが、管理者不在で不特定多数が参加できるものと(パブリック型)、管理者の許可を得た特定の者が参加できるタイプ(プライベート型、コンソーシアム型)に大別される。

 いずれの場合も、これまで政府や金融機関などが莫大なコストをかけて管理していた台帳を、参加者がP2Pの分散型ネットワークで計算リソースを出し合い、データを共有し、取引の正当性を維持しながらまとめて更新し、情報の連鎖(チェーン)として保存、相互に持ち合うことが最大の特徴で、暗号化された分散型台帳技術がこれを支える。メリットとしては、連鎖構造のデータは改ざんが困難であること、分散型のため巨大な集権型システムが不要となり、障害に強い上に仲介手数料や管理コストが不要または安価となることなどが挙げられる。仮想通貨だけではなく、様々な財の価値移転・保存、取引履歴の共有が可能となり、さらにスマートコントラクトによる契約自動執行の機能も備える。

 既に様々なユースケースがあり、具体的には国際送金、資金調達、貴金属取引、貿易金融、電子政府などである。また、世界最古の中央銀行であるスウェーデンのリクスバンクは、法定通貨クローネのデジタル通貨版であるeクローネ発行について2018年中にも判断するとしている。エネルギー関連ではマイクログリッドの中での再生エネルギーの需要者間取引や、EVチャージの課金管理を行う電子ウォレットなどへの応用例がある。国内でも、国産ブロックチェーン基盤を利用した再生エネルギー融通の実証も始まっている。

フィンテックとエネルギー 第3回2
 

計量制度や託送料金制度の見直し、システム投資が必要に

 
 しかし、度々指摘されるように、日本では計量制度や託送料金制度を見直し、ブロックチェーン導入のために壮大なシステム投資のやり直しが必要となる。仮に計量法に定められた検定機器以外の検針値が許される場合、例えば太陽光発電のパワコンで計量、それをBルートでやり取りするなど、いろいろな代替案が考えられるが、インバランス精算後でないと電力量および売買額が定まらないなど金融のプラクティスになじまないことも多く、そもそもブロックチェーンを使うことが効率的か、疑問も多い。ただ、参加者数や取引頻度の劇的な増加に対応する技術の検討は必要であり、例えば一定期間計量後に取引する非化石価値取引などから部分的に取り組むことも一案だろう。

【用語解説】
◆P2P(Peer to Peer)
複数の端末間で通信を行う仕組み。ピアはある通信プロトコルでデータを交換する2台の端末の組、または一方の端末から見た相手側の端末のこと。ピア同士が対等に通信を行うことが特徴である。P2P型に対置される用語がクライアントサーバー型。

◆分散型台帳技術(Distributed Ledger Technology)
分散型台帳はブロックチェーンの基礎技術だが、仮想通貨以外のブロックチェーン利用が広がるにつれ、分散型台帳技術は広義のブロックチェーン技術として、特に複数の組織が連携する領域での取引などに利用が拡大している。

◆スマートコントラクト
契約内容をブロックチェーン上にプログラムとして書き込み、期日に自動的に契約執行させる仕組み。複雑な契約処理において第三者認証を介さず、改ざんが困難であることから取引の正当性を維持して契約を管理・実行できる。契約自動執行機能はシェアリングエコノミーやIoT普及の重要な技術とも考えられている。

電気新聞2018年2月5日

<全3回・終わり>