日本原子力産業協会はこのほど、遊びながら原子力発電の仕組みを学ぶことができるボードゲームを作成した。「原子力発電 THE ボードゲーム」と題した対戦形式のゲームで、発電所の運転に必要な「対策カード」を早く集めた人が勝ちになる

 日本原子力産業協会はこのほど、遊びながら原子力発電の仕組みを学ぶことができるボードゲームを作成した。「原子力発電 THE ボードゲーム」と題した対戦形式のゲームで、発電所の運転に必要な「対策カード」を早く集めた人が勝ちになる。製作した地域交流部の深澤伊弦氏は「まずはゲームとして楽しんでもらえることを目指した。1回だけでなく繰り返し遊ぶことで、自然に原子力発電への知識が深まるようになっている」と話す。

 ゲームは2~6人用。原子力発電所に必要な設備、安全対策が記載・説明された10種類のカードをプレーヤーに分配。プレーヤーはルールに従いゲームシートにカードを置きながら発電所の完成を目指す。最初に10枚のカードを集め「プラント起動カード」を手に入れたプレーヤーが勝ちになる。

 学生向けの出前授業などを担当している深澤氏は、知識を一方的に教えるだけでは、なかなか原子力に関心を持ってもらえないと感じていた。そんな中、「ゲームを楽しんでいるうちに、その中で使われる言葉が覚えられるし、題材に対して興味を持ちやすい」(深澤氏)と、自身が趣味としているボードゲームに着目。作年秋、原産協会が実施した新規事業公募でボードゲーム製作を提案した。今年春のゲーム完成後、100セットを大学や高専などの教育機関に配布した。

 こだわったのは、ゲーム性と原子力理解促進の両立だ。外部の製作会社にゲームづくりを発注する一方、協会で原子力発電所の建設に携わったことがある職員とも協力し、「どこを重要視するべきか。何を伝えたいか」(同)を考え、対策カードを10種類に絞った。例えば1番目のカードでは地盤モデルを強調。「一般には知られていないが、地震対策として、強固な岩盤の上に設備を設置していることを伝えたかった」と話す。

 ゲーム完成後、問い合わせが相次いだため、会員企業などに100セットを追加配布。社内のコミュニケーションツールや新入社員研修などに活用できると反響が大きいという。SNS(会員制交流サイト)の口コミで「普段とは異なる層からの問い合わせも多く、ボードゲームの可能性を感じた」と深澤氏。「配布先からの感想を踏まえゲームを改良するなど、第2弾につなげていきたい」と意欲を話す。

 「原子力発電 THE ボードゲーム」(非売品)に関する問い合わせは、日本原子力産業協会地域交流部(boardgame@jaif.or.jp)まで。

電気新聞2021年6月25日