経済産業省は火力発電所などの保安スマート化を推進するため、規制の見直しを検討する。電気事業連合会が経産省に対し、具体的な要望を示した。例えば、遠隔での巡視点検や監視制御を認めることで、保安活動を発電所外に集約できる。これまでは通常時も要員が常駐していたが、センシング技術向上やサイバーセキュリティーなどの課題を克服すれば発電所の運営無人化にもつながる可能性がある。経産省は、こうした技術について2025年までの実装を目指しており、関連する規制も見直す方針だ。

 電気保安人材の高齢化や入職者が減少する中、保安力の維持向上と生産性向上の両立が課題となっており、国は電気保安分野でもIoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)、ドローンなどの新技術導入を推進したい考え。現状、各事業者でスマート保安に向けた取り組みが徐々に進んでいるが、新技術導入の障害となっている規制があり、経産省が見直しを進める。加えて、スマート保安普及のための実証支援や、ガイドライン策定にも取り組む方針だ。

 経産省は、スマート保安官民協議会の下に設置された非公開の「電力安全部会」で、スマート保安化に向けた電気保安分野のアクションプランについて概要を固めた。今後、火力や水力などの発電設備や送配電設備などのスマート保安化に向けた課題を取りまとめ、官民協議会に報告する。

 現状、火力の定期事業者検査は運転状況や設備の劣化状況にかかわらず、一定の間隔で設備を止めて検査する必要がある。今後は、センシング技術で蓄積された膨大なデータをAIで分析し、異常予兆検知や保守計画策定に生かすことが想定される。その際、定期事業者検査のタイミングを一律ではなく、事業者が判断して設定できる規制体系への変更が想定される。また、火力発電所は通常時も発電設備の常時監視制御や法令順守のため、一定の要員が昼夜問わず常駐する必要があった。こうした規制を見直せば発電所の運営無人化にもつながる。

電気新聞2020年11月24日