「モデルY」を装着して基礎工事を進める九建の作業員

 荷揚げや荷降ろし、ロボットとあうんの呼吸で――。パナソニック、三井物産など5社が出資するATOUN(奈良市、藤本弘道社長)は、重量物を持ち上げる際に腕や腰の動きを支援する着用型のロボット・パワードウエアの新製品について、受注を開始した。体の動きに合わせてモーターを稼働し腰をアシストする従来機種に、腕を支える新機能を追加した。製造や物流、建設業など幅広い業界に向けて売り込む考え。2021年1月の出荷を予定する。
 
 ◇新機能で楽に
 
 受注を開始したのは同社のパワードウエア「ATOUN MODEL Y +kote」。腰の動きを支えた従来機種「モデルY」に、ワイヤとセンサーで腕を支えるパーツ「コテ」を搭載した。指先に装着したセンサーが、荷物を持つ動きを感知。本体の肩付近にあるモーターがワイヤを巻き上げて手首を引き上げるようにした。類似の製品との比較では、ワイヤを通す筒状の部材などを使わず、より体の動きになじみやすくした点が特長。未着用時との比較で、作業効率は最大で約37%向上すると見込む。

 一方で、バッテリーの稼働時間が課題。稼働状況に左右されるものの約2時間半と心もとないが、予備のバッテリーを用意することでこの課題は克服できる。本体の背中の部分にバッテリーを格納しており、「リュックからペットボトルを取り出す感覚」(広報)で交換も容易という。同社は「モデルY+コテ」について、21年度までに約千台の販売目標を掲げる。価格はオープン。販売店によってはリースの形態でも提供する。
 
 ◇電力の現場に
 
 同社のパワードウエアには電力工事の現場からも関心が寄せられている。19年4月には九州電力の50万V架空送電線工事の現場で、九州電力グループの九建が「モデルY」2台を導入。基礎工事や鉄塔組み立てなどの工程で使われ、現場からは「上半身がアシストされて重い資材も楽に持ち上げられる」「腰を支える機能のおかげで、中腰姿勢で行うならし作業やボルト締め付けが楽」「反応がスムーズで扱いやすい」などの声があった。ATOUNは、九州電力送配電が新技術の導入に積極的に取り組んでいることから同社送電部門と連携し、山道で歩行支援用の機種「HIMICO」の検証も進めているという。

 「モデルY」に対してはこのほかにも複数の電力会社、電気工事会社から問い合わせがあったという。腕のアシスト機能が加われば、さらなる負担軽減も期待できそうだ。

 ATOUNは「モデルY+コテ」について、「手軽に装着して使える。険しい山岳地帯などの厳環境でも活用して頂きたい」(広報)と、電気工事の現場などにもアピールしていく考えだ。

電気新聞2020年8月20日