「エネルギー供給強靱化法」が可決、成立した参院本会議。新型コロナウイルス対策のため座席を変更していることから起立採決となった(5日、国会)

 電気事業法やFIT法(再生可能エネルギー特別措置法)などの改正を盛り込んだ「エネルギー供給強靱化法」が5日、参議院本会議で可決・成立した。再生可能エネの導入拡大と国民負担の軽減を目指し、一部電源を市場連動型の支援制度に移行させるほか、送配電事業者の収入に上限をかけ、その範囲内でのコスト効率化を促すことが施策の柱。自然災害に備えるため、早急に制度的な手当てが必要なものを除き、2022年4月に施行される見込み。

 FIT法の改正では、これまで一律にFIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)で支えてきた再生可能エネ電源を、競争電源と地域活用電源に大別。事業用太陽光と風力は競争電源として、FIP(フィード・イン・プレミアム)に移行させる。

 電事法関連では、託送料金制度改革が施策の目玉だ。従来の総括原価方式をベースとしたものから、欧州で実績のある「レベニューキャップ制度」に見直す。経産相が事業者の投資計画などを踏まえて収入上限を設定。定期的な洗い替えも行って、枠内での効率化努力を後押しする。

 自然災害時のレジリエンス(強靱性)確保を巡っては、関係機関との連携などをあらかじめ定めておく「災害時連携計画」を一般送配電事業者が協力して作成し、経済産業相に届け出ることを義務付ける。同計画には、設備の仕様統一化などに関する事項も盛り込まれる見込み。

 電源側からの増強要請ではなく、国が「プッシュ型」で送配電網を整備するための「広域系統整備計画」の策定や、FIT賦課金の交付など幅広い業務が今後、電力広域的運営推進機関(広域機関)に追加される。国会審議では、広域機関について透明性の確保など、必要な対策を講じるよう求める声が上がった。

 各種制度の詳細設計は今後、経産省の有識者会議で進められる。FIPは22年度からの運用を見据え、「21年度のできるだけ早いタイミング」(経産省・資源エネルギー庁)で、過去の卸電力市場の平均から算出する「参照価格」と入札で決定する「FIP価格」の双方を決める考え。卸市場の平均の取り方などが議論を呼びそうだ。レベニューキャップ制度については、電力・ガス取引監視等委員会を中心に、検討を深めていく予定だ。

電気新聞2020年6月8日