経済産業省・資源エネルギー庁は5月26日、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた電力ネットワークの課題などを洗い出す研究会を再開し、議論の方向性を示した。事務局は送配電事業者の役割分担や再生可能エネの導入拡大に伴い、配電網の柔軟性や慣性力をどう確保していくかなどを論点として提示。欧米の電力市場の動きを巡り、海外電力調査会などからヒアリングも行った。

 「次世代技術を活用した新たな電力プラットフォームの在り方研究会」(座長=山地憲治・地球環境産業技術研究機構副理事長・研究所長)を約10カ月ぶりに開き、今年度の議論に着手した。

 エネ庁は今後の論点を例示。脱炭素社会を見据えた再生可能エネの市場統合、人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)を活用した送電・配電の運用高度化に向けた事業者間の役割分担などを挙げた。欧州で市場化をにらんだ先進的な取り組みが進む、配電分野の柔軟性や慣性力の価値をどう扱うかといった点でも検討を深めていく方針だ。

 海電調は会合で再生可能エネの導入拡大に伴い、ドイツや北欧で系統混雑や周波数変動が課題として顕在化していると説明。配電網の混雑処理を回避するため、調整力を取引する市場「ローカル・フレキシビリティー・マーケット」の実証の動きなどに触れた。

 日本エネルギー経済研究所は、欧州の調整力市場の動向について概観した。欧州では調整力の商品設計が15分単位になる予定なのに対し、日本ではインバランス精算を含め30分単位になっている点を指摘。英国などの事例を引き合いに、慣性力確保の能力を今後市場設計にどう位置付けるかも検討課題として示した。

 出席した委員・オブザーバーからは、脱炭素化に向けては供給側設備だけでなく、電気自動車(EV)など需要側リソースを組み合わせた総合的な視座が必要といった声が上がった。「電力分野にデジタル技術をどう融合させていくかさらなる検討が必要」といった意見も出た。

 研究会は2018年10月に設置。現在国会で審議が進んでいる「エネルギー供給強靱化法案」に盛り込まれた託送料金制度改革のほか、スマートメーター(次世代電力量計)のデータ利活用、計量制度の合理化といったテーマをこれまで集中的に議論していた。

電気新聞2020年5月27日