図 2019年度上期の太陽光落札結果
図 2019年度上期の太陽光落札結果

 平均落札価格は1キロワット時当たり12円98銭――。FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)の費用負担調整などを担う低炭素投資促進機構が、9月に公表した事業用太陽光の入札結果(2019年度上期分)だ。

 500キロワット以上の設備を対象とし、落札した63件の平均価格が前回入札(18年度下期分)の最低価格を1.3円下回った。最低落札価格は10円50銭で前回より4円弱安い。
 
 ◇自家消費の動き
 
 経済産業省によると、欧州の太陽光(2千キロワット)買い取り価格は19年で7円程度まで下がった。それと比べると見劣りするが、日本でFITを導入した12年度の買い取り価格が40円(事業用)だったことを踏まえると、直近の水準は隔世の感がある。

 太陽光の買い取り価格は当初の40円が高すぎ、努力の結果でコストが下がったというより、「多すぎた利益をはき出しただけ」(大手電力関係者)という見方が根強くある。

 一方で、内実はともかく、実際に価格が下がるインパクトは大きい。ある再生可能エネ発電事業者は入札の評価が価格一辺倒となることに懸念を示しつつ、「今後も価格低下の流れは続くだろう」と話す。

 その太陽光が生み出す電気の価値を測る物差しになるのが、送配電網を通じて小売会社が供給する系統電力との価格差だ。

 小売各社がしのぎを削る高圧市場の場合、負荷率などによって差はあるが、1キロワット時当たり料金単価が10円台後半まで下がってきた。落札結果が示す通り、太陽光のコストが10円台前半なら、系統からの電気を買うより太陽光の電気を自家消費した方が安くつく。

 実際、国内のスーパーマーケットなどでは店舗の屋根に置いた太陽光の電気を自家消費し、電気代を減らす取り組みが広がる。需要家の初期投資なしで太陽光を導入し、月々のサービス料金という形で投資回収する「第三者所有モデル」を手掛けるプレーヤーも増えてきた。

 こうした動きを後押しするのが、系統電力に対する価格上昇圧力だ。特に、全需要家が負担するFIT賦課金の影響は大きい。12年度の制度導入時の1キロワット時当たり0.22円から年々上昇し、19年度は2.95円になった。

 仮に、高圧の料金単価を1キロワット時当たり17円とし、賦課金を含むと考えると、その比率は17%。電気代の2割弱を占めることになる上、この費用は32年のピークまで上がり続ける。経産省は30年度の再生可能エネ導入目標(電源構成全体の24%)が実現した場合、賦課金が3.5円に増えるとの試算を公表している。

 賦課金は系統電力の使用量に応じて課金される一方、太陽光の自家消費にはかからない。太陽光の価格が下がれば下がるほど、3円程度のハンディを背負う系統電力は劣勢に立たされる。
 
 ◇家庭用でも競合
 
 家庭用太陽光は、設備が小さい分、事業用よりコスト高だが、系統電力の単価も1キロワット時当たり25円程度と高く、こちらも競合の余地がある。一方で、電力需要が大きい業務用施設と違い、家庭は電気を多く使えない時間帯に太陽光の電気が余りがちになる。

 これまではFITの固定価格で大手電力が高値で引き取っていたが、11月からはこの前提が変わった。FITの買い取り期限10年を終える太陽光が出てきたからだ。

 19年度は53万件・200万キロワットの太陽光が期限切れを迎える。累計では23年までに165万件・670万キロワットの太陽光が自由売電に移行する。

 1件当たりの量がわずかで出力が振れる太陽光の電気は、小売会社にとって使いにくいが、FITの買い取りでは得られなかった環境価値がつく。それも含めた電気の価値をどう判断するか。大手電力だけでなく、新電力も受け皿になる買い取りプランを打ち出し、FIT切れ電源ユーザーへの営業に動き始めた。
 

 
 11月からFITによる住宅用太陽光の買い取り期限切れが始まった。また、海外と比べると見劣りするものの、国内でも太陽光発電のコストダウンが進み、条件次第では系統電力を脅かす価格競争力を持つようになった。これらを契機に、太陽光を巡るビジネスが変わりつつある。安くなった太陽光の電気は、日本のエネルギー事業をどう変えるのか。最前線を取材した。

電気新聞2019年11月11日

※連載「変化を追う 第5部 変わる太陽光ビジネス」は現在連載中です。続きは電気新聞本紙または電気新聞デジタル(電子版)でお読みください。