
米国が2月末に対イラン攻撃を開始してから、まもなく1カ月が経過する。ホルムズ海峡が事実上の封鎖状態となり、原油やLNGなど中東産エネルギー供給が途絶。世界市場に甚大な影響を与えている。停戦やホルムズ海峡の開放が不透明な状況の中、今後どのような方向に進むのか。産官学の有識者に話を聞いた。
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日本にとって、一番重要なチョークポイントがホルムズ海峡となる。石油輸入量の9割超、LNGの1割弱が通過する要衝だが、完全に代替できるルートがない。次に重要なのがマラッカ海峡で、こちらは代替ルートがある。航路が長くなると運賃や保険料の上昇が想定されるものの、船舶の航行自体は継続可能だ。日本は戦後、自分たちのシーレーン(海上航路)に目配りできていないことが安全保障上の課題と言える。
エネルギーの観点では、(1)化石燃料(2)再生可能エネルギー(3)原子力発電(4)水素・アンモニアなど新エネルギー――の4本柱をしっかりと進めるべきだ。化石燃料についてはLNGへの転換を促しながら、石油に対する依存度を減らしていく方向性は正しい。
ただし、LNGは備蓄できる量が石油に比べ限られる。これらを踏まえると、やはり原子力の活用が重要になる。安全基準を満たした原子力を動かしていくことが、エネルギー安全保障に向けても正当で最善な方法と考えている。
現在のイラン情勢については、ホルムズ海峡の封鎖が長期化し、石油備蓄がなくなると桁違いの危機に陥る。そうならないように各国と連携し、ホルムズ海峡の安全を確保することが必要だ。しかし、日本は憲法第9条が根底にあるため、停戦後にしか自衛隊を派遣できない。万が一、機雷をまかれる事態となれば停戦後の除去で貢献できる部分はある。日本の掃海能力は世界から高く評価されている。
紛争の泥沼化も想定されるが、トランプ米大統領は早く終わらせたいはずだ。自身の力を中国に見せつけたいと意識する中、今後予定される米中首脳会談が停戦に向けた一つのタイミングとなり得る。米国の対イラン攻撃を踏まえ、中国による台湾有事のリスクは短期的には低くなっていると思う。中国が期待するのはイラン情勢が長引き、米政権が疲弊するタイミングだ。(談)
◆メモ
かねはら・のぶかつ=1981年東大法卒、外務省入省。国家安全保障局次長などを経て2019年退官、23年から現職。主に安全保障分野を担当する。
電気新聞2026年3月26日





