
トランプ米大統領は1月にベネズエラのマドゥロ大統領を拘束した成功体験が頭にあり、イスラエルに引きずられる形で2月末に対イラン攻撃を開始した。最高指導者ハメネイ師の殺害までは戦略らしきものがあっただろうが、それ以降は迷走している状態だ。転々と変化する発言内容からも、熟慮の末に総合的な判断をしているわけでもなさそう。周囲にイエスマンしか居ない政権で、出口もなく運任せな対応で良い方向に進んでいないのは明らかだ。
一方、イランは原油価格の高騰がトランプ氏の弱みだとすぐに見抜いてきた。ホルムズ海峡を実効支配し事実上の封鎖を行うことで、原油・ガスなどのエネルギー価格を跳ね上げることができる。イランにとって体制の堅持が最優先の課題。そのためにホルムズ海峡は最後の切り札で、簡単に手放すわけがない。核開発は諦める可能性があっても、体制の維持は絶対に諦めないだろう。
停戦交渉が行われているかはかなり怪しいが、仲介国の存在は確かだ。米国、イランの双方と良好な関係を保つパキスタンと言われているが、まだ最初の論点整理をしている程度かと思われる。
仮に停戦しても、民間の船舶が安心してホルムズ海峡を通航できるのは相当先になるのでは。通航する船舶の数が対イラン攻撃前の水準に戻るまでに、半年から1年ぐらいかかってもおかしくない。イランが航行料を取るという話も報道されているが、本来そんな権限はない。封鎖状態が現実化したことで、経済戦争に切り替わっている。
トランプ政権は米国内の物価安定を公約に掲げ唯一達成できていたのがガソリン価格だが、原油高によってこのカードも失ってしまった。トランプ氏の発言に振り回されて市場もその都度反応するが、原油価格は下がりきらない状態になりつつある。11月の中間選挙に向けては、すでに打ち手がなくなっている。(談)
◆メモ
いまむら・たかし=1989年一橋大商学卒、丸紅入社。丸紅米国会社ワシントン事務所長などを経て、2024年8月から現職。独自の米国観を持つ。
電気新聞2026年3月27日





