米国ではマイクロソフト、アマゾン・ウェブ・サービシーズ(AWS)、グーグル・クラウド・プラットフォームなどが激しいAI(人工知能)データセンター(AIDC)拡張競争を繰り広げている。昨年1年間の総投資額(公表数字は各社合計)は、世界レベルで57兆円から60兆円に達し、その約半分が米国内向けといわれる。空前のデータセンター建設を満たすには、行政による迅速な手続きや規制緩和が欠かせない。今回はCES2026のパネル・セッションから規制緩和を目指すAIDC戦略について解説していく。

 ◇AIはグリッド近代化資金を担う

 米国では、電力利用の効率化により過去約20年から25年間、電力需要は横ばい状態だった。近年、電気自動車などの需要増は予想されたものの、議論レベルにとどまった。しかし、バージニア州北部やテキサス州オースチンなどのDC集積地が示す通り、過去数年のAIDC拡張競争は業界の様相を一変させている。

 米国では、発電所の新規建設に加えて、PJM(地域送電機関)やFERC(連邦エネルギー規制委員会)の協力を得て、稼働率の低いピーク時用発電所の余剰電力利用なども議論されている。

CES2026「スマートグリッド」セッションで発言するAWS副社長のシャノン・ケロッグ氏

 CESの「スマートグリッド」セッションに参加したAWS社のシャノン・ケロッグ氏は、ペンシルベニア州で進める約3兆円のAIDC投資を具体例に「AIDC事業者がグリッドの近代化資金を負担する時代」を強調した。

 同社は当初、サスケハナ原子力発電所(セーラム・タウンシップ)の隣接地にDCを建設し、送電網を迂回する発電所直結方式(Behind―the―Meter:メーターの裏側)を狙っていた。しかしFERCは、利用者が送電網負担を迂回するのは公益に反するとして、直結契約を却下した。

 そのためAWS社は、送電網経由で原子力発電所から供給を受ける方式に切り替えざるを得なかった。同セッションでは、地域の電力会社に1施設当たり平均340万ドルの黒字をもたらし、最大で610万ドルのコスト削減に寄与するという調査結果も紹介された。

 ケロッグ氏は「地域の経済発展に大きく貢献」できるにもかかわらず、「規制・制度が電力問題の解決を困難にしている」と主張した。

 ◇SMRへの期待

 同パネル・ディスカッションでは、ウェスティングハウス(WH)のドラゼン・クライナ氏も原子力発電所、特にSMR(小型モジュール炉)の再評価で「建設許認可が最大のボトルネック」と述べている。

 最近、AIDC大手のグーグルがWHと提携し、デジタル・ツインやAI主導シミュレーション、予測型分析などで「建設プロセスへのAI利用」を開始している。

 WHは、過去75年間にわたり、原子力プラントの建設、運用、廃炉に関する膨大なデータを蓄積している。グーグルのAI技術と蓄積データを使い、建設ミスの回避や効率化を図り、許認可期間の短縮によりデータセンターが必要とする迅速な電源供給を目指している。

 また、グーグルは2025年12月にエネルギー・インフラ企業のインターセクトを47億5000万ドル(約7000億円)で買収し、テキサス州で発電所直結型データセンターの整備に意欲を示している。なお、AWS社もワシントン州でSMR投資を進めている。

 連邦政府や議会はAIDC乱立による供給不足が、消費者向け電力料金の上昇につながることに神経を尖らせており、DC事業者へも対策を求めている。その点からも、発電所直結型DCは同対策として注目されている。

 各登壇者は「ボトルネックが規制であること」で一致するものの、「連邦レベルでの許認可改革は遅い」と口を揃える。現状ではオハイオ州やペンシルベニア州のように許認可プロセスに期限(Shot Clock)を設けたり、プロセスを可視化したりする州レベルの取り組みに期待している。(この項おわり)

電気新聞2026年3月2日