前回に続き「ユーティリティAI準備指数2025」から欧州電力2社を取り上げる。英ナショナルグリッドは再生可能エネルギー拡大で増す複雑性に対処するためAI(人工知能)実装を強化した。社内AI基盤整備と同時にAIスタートアップ出資の2層戦略を取る。特に2.5億米ドルの資金でAIスタートアップ20社超への出資は他電力を圧倒する。スペイン・イベルドローラは陸上風力発電のリーダー。再エネAI運用基盤がグローバル展開の武器だ。イノベーションに投資する業界リーダーでもあり、AI中核研究所など6施設で先進的AI活用にも取り組む。
ナショナルグリッドは2018年からAIスタートアップ18社に1.5億米ドル出資した。これはスタートアップ総出資額の37%を占め、AI注力の証左となる。以下、主な出資先を紹介する。

◇常時監視で停電減
米AiDASHは衛星データとAIを統合しインフラをリアルタイム監視する。送電線付近の潜在的に危険な樹木を迅速に特定し優先的に伐採できる。マサチューセッツ州でAiDASHを導入し、停電を30%削減した。
イスラエルExodigoは地中探査レーダー搭載ドローンで空中から地下を可視化、AIで地下構造物を特定することで地下工事の事故を防止する。ニューヨーク州でExodigoを導入し、地中の障害物を検知・回避することで変電所と送電線の拡張を加速した。
英Luminanceは契約ワークフローを自動化する法務AIを提供、クリーンエネルギー契約交渉の効率化を支援する。英SensatはAIとデジタルツインでインフラを可視化し工事を迅速化する。英国の変電所更新で工期を数週間短縮した。
米Urbintはインフラと作業員の安全に対する脅威を予測するAIリスク管理を開発。米国で第三者の掘削作業によるパイプライン損傷の潜在的リスク特定作業を35%短縮した。
25年、ナショナルグリッドは新たに1億米ドル出資を宣言した。
出資第1号の米AmperonはAIによる高精度需要・発電量予測で注目のスタートアップ。スタートアップへの出資は企業戦略の先行指標となる。他の主なAIスタートアップ出資も別表に紹介する。
◇再エネを遠隔監視
次に、イベルドローラはグローバルに保有する再エネ電源(約4500万キロワット)を遠隔監視制御するため、CORE(再エネ運用センター)を持つ。03年から20年掛け自社開発したアルゴリズムで運用最適化しているのが強み。AIによる風力タービン配置の最適化、AI気象予測による世界400カ所の風力発電量予測を高精度化することを実現した。
21年、将来のグリッド研究を目的にグローバルスマートグリッドイノベーションハブを設立した。200人の研究員、80のパートナー、年1.3億ユーロの研究予算で120のプロジェクトに取り組む。
主な領域はスマートシティー(配電網のデジタル化)、スマート変電所(サステナビリティー設計)、デジタルファクトリー(ロボットによる現場安全性向上)、サイバーセキュリティーだ。
22年にはAI中核研究所を立ち上げ「持続可能なエネルギー転換のためのAI」プロジェクトを推進する。スペインの政府・研究機関・大学も参加し、データサイエンティストなど200人体制で60件のAI研究と実装を進める。
分野はスマートグリッド(電力需要予測、予兆診断、インフラ点検自動化)、再エネ管理(需給バランス最適化、蓄電池運用最適化)、顧客・エネルギーサービス(顧客クレーム分析と対応自動化、メタバース案内役の開発)。
電気新聞2025年12月22日





