◇医療用として開発された温水洗浄便座

1980(昭和55)年に発売を開始したTOTOの「ウォシュレットG」。日本における温水洗浄便座の普及率は海外と比べても非常に高く、2人以上の世帯で82%に至っている(2024年3月末時点、内閣府資料より)
1980(昭和55)年に発売を開始したTOTOの「ウォシュレットG」。日本における温水洗浄便座の普及率は海外と比べても非常に高く、2人以上の世帯で82%に至っている(2024年3月末時点、内閣府資料より)

 現在、日本独自の電気製品だと世界から思われている温水洗浄便座は、アメリカの医療用製品「ウォッシュエアシート」を東洋陶器(1970年にTOTOに社名変更)が1964年、輸入・販売したのが始まりで、米国ではもともと健康増進を目的として開発されたものであった。TOTOは1980年に日本初の温水洗浄便座「ウォシュレット」を誕生させたが、実は伊奈製陶(INAXを経て現在LIXIL)が医療用をターゲットにサニタリーナ61(1967年)の製品化に成功している。
 この商品が一気に普及したのは1982年に放映された「おしりだって、洗ってほしい」という戸川純のテレビコマーシャルがきっかけであり、電気蚊取り線香の例を見ても、昭和の時代において生活に入り込む電化はテレビコマーシャルの効果が絶大だったことがよくわかる。
 この連載では業務用厨房機器もいくつか登場したが、厨房機器自体ではないものの、焼肉という食文化の普及に大きく貢献した電化機器に無煙ロースター(ベンチレータ)がある。その起源は諸説あるが、大阪の食道園は自身のホームページで昭和47年に日本で初めて無煙ロースター(シンポ株式会社製)を導入したとしている。叙々苑や牛角といった焼肉チェーンなども、現在はシンポの無煙ロースターを採用しており、同社の業務用無煙ロースターはシェア50%を超えている。
 社会インフラ分野からは、鉄道や産業の分野で拾えなかった信号機の中から、音響付き信号機を紹介したい。欧米ではブザー音が主流で、音楽がついているのは日本独自のものである。昭和40年代から導入が始まり、「ピヨピヨ」「カッコー」といった鳥の鳴き声から始まり、のちの平成以降は「青です。渡れます」という音声案内や「通りゃんせ」「故郷の空」といった音楽ものの普及し、アジア各国にも普及していくことになる。10選には最大手の小糸工業のものをあげた。

◇不正防止に一役 再びのマージャン文化隆盛に期待

インベーダーゲームやファミコン(ファミリーコンピュータ)など、昭和時代に生まれたゲームは度々、社会現象といわれる風景を生んだ。写真はファミコンソフトが並べられた家電量販店の店頭に集まった多くの人々(東京・新宿)
インベーダーゲームやファミコン(ファミリーコンピュータ)など、昭和時代に生まれたゲームは度々、社会現象といわれる風景を生んだ。写真はファミコンソフトが並べられた家電量販店の店頭に集まった多くの人々(東京・新宿)

 娯楽分野で本紙でも取り上げた全自動麻雀(マージャン)卓は、いくつかの進歩を経て現在の形になっている。麻雀で手間がかかるのは洗牌(牌を混ぜる)と砌牌(牌の山を積む)だが、1972年にスイッチを入れるとまず磁力で牌がすべて裏返り、あとは手で積むという洗牌のみを自動化したものが現れ、「マグジャン」「オートジャン」といった製品名であった。その後、初めての全自動麻雀卓はミシン部品メーカーだった東和製作所(現TOWA JAPAN)によって、1977年に発売された。商品名は「パイセッター」である。
 麻雀という競技において、ほとんどの不正行為は牌の積み込みとサイコロの出目操作によって行われていたので、全自動麻雀卓はいわゆるイカサマによって生活していた雀士たちを駆逐し、麻雀の公正化・大衆化に大きく貢献した。
 当時人気麻雀漫画として流行していた片山まさゆきの「ぎゃんぶらあ自己中心派」(1982年~)「スーパーヅガン」(1981年)も基本的に全自動卓を前提に描かれている。登場当初は牌がよく混ざらず、牌山に偏りが生じると言われていたし、筆者の学生時代である昭和50年代後期に手積みと比べてそういう指摘をしていた者も多くいた。しかしながらその後の研究開発でその傾向は薄まったとされている。令和の時代、ゲームに時間がかかるということもあって、若者のライフスタイルに合わない麻雀は敬遠されがちであるが、プロ麻雀のMリーグ会場には満員の観客が詰めかけている。日本が産んだ電化遺産である全自動卓が、次世代の麻雀の隆盛につながることを期待したい。
 最後に登場するのは家庭用ゲーム機の一つ前の若者のゲームの王様・スペースインベーダーである。タイトーが1978年に開発・販売し、世界的なブームを巻き起こした歴史的なシューティングゲームで、5列55匹のインベーダーを倒すこのゲームは、それまでのアーケードゲームのコンセプトをテーブル型に変え、喫茶店に導入しやすくした結果、30万台以上は日本中に普及した。「名古屋撃ち」等が懐かしい世代もいることだろう。

「懐かしい昭和の電化」Web版10選

・ソノシート専用プレーヤーSR-1/パイオニア 昭和37年
・ヤマハ エレクトーン D-1 昭和34年
・カワイ 電子オルガン【昭和54年からドリマトーン】初号機 昭和35年
・ペルチェ素子応用技術 昭和40年代
・音響付信号機/警察庁・小糸工業 昭和40年代
・無煙焼肉ロースター・食道園/シンポ 昭和47年
・TOTO ウォシュレット テレビコマーシャル 戸川純編 昭和57年
・東和製作所(現TOWA JAPAN) パイセッター 昭和51年
・スペースインベーダー/タイトー 昭和52年
・キンチョウリキッド テレビコマーシャル 近藤正臣・30日タヌキ編 平成3年~

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