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◆燃料インフラ共有が裕度に
 ◇消費者側にも数量柔軟性/全体最適化の視点必要

 ○エネルギーセキュリティー

 日本には欧米の燃料パイプラインのようなインフラシェアや、燃料コモディティーを取引する燃料市場がないため、発電事業者各社による適切な量の購入契約と、カーゴ船での燃料の安定調達が電気の供給力を支えている。また輸入基地間をつなぐパイプラインや内航船システムもないことから、日本のエネルギーセキュリティー(燃料の(1)量の確保)は、地方ごとの民間企業による燃料の購入契約と受入基地運用、そして商社経由の場合には商社の傭船契約と輸送に依存している。

 そして燃料の量の確保の次に重要なのが、燃料の過不足の調整による(2)調達の安定化であり、長期的な過不足の調整は、短期契約と長期契約を適切に配分して燃料調達することによって可能となる。例えば今後、再生可能エネルギーの拡大や原子力発電の再稼働を想定すれば、電源構成における火力発電の割合は低下していくので、燃料調達での短期スポット契約の割合を増やして長期契約を減らせばよい。

 他方、短期での過不足調整、つまりカーゴ船で運ばれてくる燃料の(2)調達の安定化には、燃料購入の契約での数量柔軟性およびフィジカル(現物)での数量柔軟性が必要となる。

 契約での数量柔軟性は、発電各社が、DQT(取引数量の下方修正)、UQT(取引数量の上方修正)などの金融的な意味でのオプションを保有することで実現するため、オプション価値がコストに含まれることになる。フィジカルな数量柔軟性については、カーゴ転売能力やインフラ(基地・ストレージなど)の裕度が重要となるが、インフラの裕度を拡大するには、基地やタンクの増設が求められ、その建設に時間とコストがかかるため、今までは契約でのオプションに依存してきた経緯がある。今後も、海外の地域紛争による燃料カーゴの遅延リスクや、コロナや自然災害による被災などによる需要の下振れ・燃料余剰リスクが増える事態が予想できるが、契約上での柔軟性の行使には2~3カ月かかるため、フィジカルな数量柔軟性を確保することがより重要になる。

 しかし現在は、発電所のインフラがフル回転して発電している状況であり、インフラの裕度によるフィジカルな数量柔軟性が不足しているといえる。インフラの裕度がなければ、燃料不足の場合には、燃料制約によって出力抑制・運転停止となり、発電所の収入減少によって事業性が下がるとともに、停電リスクも増える。また余剰の場合には、余剰燃料による安価な市場価格を無視した(経済メリットオーダーから外れた)発電により、逆ザヤが発生し、事業性の低下につながる。さらに滞船が増えると滞船料の支払いも上がり、事業収支を圧迫する。

 インフラの裕度がないのであれば、カーゴの転売という方法で、短期のフィジカルな量の柔軟性を得られるが、日本では転売市場が未発達で実現が困難になっている。また地方ごとに設計されたインフラの個々の特徴により、それぞれの基地に入る船の形状が異なるため、ロジスティックスとしてカーゴ船の共通利用度が低い。その結果、数量柔軟性はインフラの裕度に依存している。