◇健康状態の把握 電子でより鮮明、詳細に測る時代に

このように工場や農業の電化は動力の転換を起点として進んだのに対し、医療の電化は正確な診断や患者の負担軽減に重点が置かれた。例えば、超音波診断装置は海外では、軍事用のレーダー技術を参考に始まったが、わが国では魚群探知機や探傷機を基に研究に着手し、昭和28(1953)年に世界初となる脳内疾患エコーの検出に成功した。そして,日本無線医理学研究所(現・日立アロカメディカル株式会社)が、がんの早期発見を主目的とした装置を昭和35(1960)年に完成させ、これ以降、新たな電子技術の搭載により三次元化やデジタル化等の画像表示方式の多様化に加え、適用可能な部位の拡大が進んだ。
これらの電子技術の発展は家庭用の医療機器の開発にも影響を与え、昭和50年代には,それまでの水銀式に代わって電子式の血圧計「HEM-77」(立石電機、現・オムロン)や体温計「MC-10(けんおんくん)」(同)が登場した。また頭部用の診断装置としてEMI社(イギリス)のハウンズフィールドが発明したX線CTは、同社とレコード事業で提携関係のあった東芝を始めとして国内外のメーカーが体幹部全体の撮影が可能なタイプの開発に取り組んだ。そして昭和60年には、東芝が世界で初めて高速連続回転スキャンとヘリカルスキャン機能を搭載した「全身用X線CT TCT-900S」を発売した。
また昭和62(1987)年からは、国の「第1次対がん10カ年総合戦略」を受けて、放射線医学総合研究所(現・国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構)での重粒子線治療装置「HIMAC:Heavy Ion Medical Accelerator in Chiba」建設が始まり、平成6(1994)年に完成した。この装置は放射線の影響を最小限に抑えながら切らずに治すことが可能であり、患者の負担の軽減と生活の質の向上に繋がるため、多くの治療に貢献することになった。
◆「産業の電化」Web版10選
・電照菊栽培 昭和22(1947)年:愛知県渥美半島
・電熱育苗器 昭和30年頃:長野県農業試験場飯山雪害試験地・電力中央研究所農電研究所
・がん早期発見を主目的とした超音波診断装置 昭和35(1960)年:日本無線医理学研究所
・NC装置(CNC)「FANUC250」 昭和47(1972)年:富士通ファナック
・植物工場 昭和49(1974)年:日立製作所中央研究所
・全電気式産業用ロボット「MOTOMAN-L10」 昭和52(1977)年:安川電機製作所
・家庭用デジタル血圧計「HEM-77」 昭和53(1978)年:立石電機(現・オムロン)
・小型電子体温計「MC-10」(けんおんくん) 昭和58(1983)年:立石電機(現・オムロン)
・全身用エックス線CT TCT-900S 昭和60(1985)年:東芝
・重粒子線治療装置「HIMAC」 平成6(1994)年(建設開始は昭和62=198=年):放射線医学総合研究所,住友重機械工業,東芝,日立製作所





