
前稿では、電力業界におけるスマート保安の実現に不可欠なネットワークインフラとしてローカル5Gに着目し、その体系的な要件について言及した。電力システムは社会インフラとして連続稼働が求められるため、高い信頼性と安全性が必須条件となる。高速・低遅延・高信頼ネットワークで、SIM認証システムによる高いセキュリティーが特徴のローカル5Gを抽出し、必要とされるネットワーク要件について言及した。今回は、ローカル5Gによって具体的にどのようなスマート保安が実現できるのかについて考察する。
ローカル5Gを活用したスマート保安システムは、電力業界の点検・保守作業に対し大きな革新をもたらすことが期待されている。従来の人手による巡回点検では、広大な施設内を網羅的に監視することが非常に難しく、作業員の覚知に依存するため見落としが発生するリスクが多々あった。しかし、ローカル5Gの高画質伝送と低遅延特性を活用した監視カメラネットワーク、画像認識や映像AI(人工知能)を組み合わせることで、人が入りづらく危険な設備内部の微細な劣化兆候や、老朽機器の異常状態を自動で検知できる。
これにより、従来の人手による巡回点検で必要であった目視確認から解放され、人的ミスのリスクを軽減しつつ、設備故障の未然防止が可能となる。異常発生時には、生産管理システムへリアルタイムにデータを送信することができ、AIによる自動診断と迅速な対応判断が期待できる。これによって、対応時間を大幅に短縮できる可能性がある。
◇山間部も通信可能
さらに、ローカル5Gの分散型ネットワークを活用すれば、山間部や沿岸部など従来ネットワークの整備が困難だったエリアでも、通信インフラを整備することができる。例えば、不感地帯での作業であっても、ローカル5Gを導入することで、作業員同士のコミュニケーションを可能にすることができる。
加えて、衛星通信を組み合わせることで、遠隔地へのリアルタイム情報共有が可能となる。災害時でもネットワークを構築することができるため、迅速な状況報告を実現することができるのだ。
もちろん、セキュリティー面においても有効だ。ローカル5GはSIM認証システムを導入している。これにより、ローカル5G環境下でのコミュニケーションや伝送されたデータにおいては外部からアクセスされるリスクが少なく、高い安全性を確保できる。この特徴は、特に電力インフラのように公益性が高く、高い信頼性が求められる業界にとって極めて重要な要素である。
◇中長期でコスト減
インフラ業界に求められるスマート保安には、単に業務を自動化するだけではなく、持続可能な安全性と堅牢なセキュリティー対策が欠かせない。ローカル5Gは、これらの要望を満たすだけではなく、予防保全と運用効率の向上を通じて、電力インフラ全体の持続性を高める効率的なソリューションといえる。初期導入費用を考慮しても、中長期的な視点でみれば、予防保全や業務効率化によるコスト削減効果が期待できるため、効果的な投資となる。電力インフラの、より安全かつ効率的な運営を実現するためには、こうした先端技術の導入が不可欠なのだ。(この項おわり)
電気新聞2025年8月18日





