筆者自身電気自動車(EV)ユーザーであり、また、勤務先の大学で実験用EVも日常的に使用する。このようにEVに慣れた筆者であっても、出先の充電には不安を感じることは事実だ。これには、EV側の不具合により、高速道路PAの新型急速充電器から充電が出来なかった、という強烈な体験も影響している。確実に給油できるガソリンスタンドと異なり、現段階では、質・量ともに充電インフラがユーザー側の信用を得ているとは言えないだろう。では、どうしたらいいのか。筆者の研究を解決策例として紹介したい。

 コンセントからの電力には、火力由来、太陽光由来などがその時々の稼働構成比に応じた比率で混ざっている。二酸化炭素(CO2)は火力から発生するので、太陽光発電比率の高い日本では、太陽光発電がピークとなる晴天日の昼頃と日没以降では、図1に示すように大きなCO2排出原単位の違いが発生する場合がある。従ってEVは、充電時間帯によって充電に伴うCO2排出量が変わる。

図_日変化_紐づけ技術_web

 EVの環境負荷低減をより効果的にするには、CO2排出原単位が低下し、場合によっては電力に余剰感がある昼頃を中心とする昼間帯が望ましい。昼間帯に充電できるEVとしてまず思い浮かぶのは自動車通勤のEVだ。勤務中にゆっくり充電するので、出力数キロワットの普通充電器で良く、これは価格も安い。

 勤務先の駐車場に複数の充電器がある場合を想定してみよう。個々の充電器は皆で共有しているというのが普通だろう。EVは通勤以外にも使うだろうから、EVユーザーは自身が選んだ充電サービス事業者に充電電気代を払う構造が自然と思える。

 日本で使用される普通充電器は、Mode3普通充電器と呼ばれる。交流のコンセントとしてはとてもよくできている。しかし、個体識別機能、俗にいうひも付け機能を有しておらず、充電サービス事業者などは、どの充電器とどのEVが接続しているのかを把握できず困っている。顧客EVの接続先が判らないためON/OFFしづらく、また、充電器に電力供給元の小売事業者などが判らず事業者間精算ができないため、多様な充電サービス創出の妨げになっている。

 ◇標準規格内で解決

 関係者は、GPS、QRコード、監視カメラなど様々な解決策を模索してきたが、例えばGPSでは地下駐車場では機能しないなど一長一短である。ここでは、普通充電器が準拠している標準規格の範囲内で、この問題を解決する技術を簡単に説明しよう。

 現行規格では、充電電流値を指定することで能動的に変化させることができる。この機能を利用して、図2のように充電の最初の2~3分の電流を変化させてパターンを作ることがその原理だ。

図_日変化_紐づけ技術_web

 いわば充電電流に指紋を付けるようなもので、この指紋を充電器側、EV側ともにクラウド経由で取り出して比較し、一致すればそれぞれが相互に接続していると判定できる。それさえ判ってしまえば、充電器、EVそれぞれのデータベースにある関係者データなどと芋づる式にひも付けて認証し、様々なサービスを提供できるだろう。このように充電プラグを挿すだけで全てが完結する方式を「プラグ&チャージ」と呼ぶ。

 ◇配送車への応用も

 この技術は、例えば、宅配便などの車両基地で、充電器とランダムにつながる配送車の使用電力量管理にも適用でき、本技術の応用先の一つとして期待されている。

 急速充電器ももちろん必要だが、安価な普通充電器でパーキングメーター、コインパーキングなど、いたるところで充電機会が得られれば、充電に関するユーザーの不安は相当軽減されるだろう。筆者はこれをユビキタス充電環境と名付けて研究テーマとしている。

◆用語解説

 ◆CO2排出原単位 特定の活動やプロセスから排出される二酸化炭素(CO2)の量を、単位当たりで示す指標のこと。電力の需給においては、キログラム―CO2/キロワット時で表すことが多い。

 ◆Mode3 国際規格IEC61851―1に準拠した充電器で、AC100Vないし200Vで充電する方式。他に、充電ケーブルに安全装置を装備したMode2、充電ケーブルのみのMode1がある。

電気新聞2025年5月12日