送配電10社が集結した共同訓練を初めて実施


 一般送配電事業者10社は20日、広島市で行っている「災害時連携計画」に基づく共同訓練を報道公開した。倒壊して道路をふさぐ電柱を陸上自衛隊の特殊車両で撤去した後、送配電各社などが現場へ移動。高所作業車などを用いて断線した高圧線を修理し、折損した電柱の仮復旧に取り組んだ。10社から約340人の配電社員が参加し、役割分担を決めた上でそれぞれの復旧作業を迅速にこなした。10社が1カ所に集結して共同訓練に取り組むのは初めて。

 共同訓練は災害時の相互応援や関係機関との連携を深めることが目的。参加者は中国電力ネットワークの南原研修所(広島市)に集合し、18日からきょう21日までの4日間かけて情報連絡や応援受け入れ、復旧作業などの訓練に取り組んでいる。

 今回の訓練は線状降水帯による集中豪雨の影響で、電力設備に甚大な被害が発生して約40万戸が停電したと想定。20日の復旧訓練は、まず進入しにくい場所へ北海道電力ネットワークと北陸電力送配電がドローンを飛ばして巡視し、倒壊して道路をふさぐ電柱や、高圧電線の断線箇所を確認した。沖縄電力が倒壊電柱の高圧線を電柱から取り除いた後、陸上自衛隊がクレーンを搭載した特殊車両を動かして倒壊電柱を撤去した。東北電力ネットワークと中部電力パワーグリッド、九州電力送配電が現地に入り、高所作業車を使って断線した高圧線を修理。中電工も現地入りし、折損した電柱の仮復旧作業に取り組んだ。

 その後は東京電力パワーグリッドと関西電力送配電、中国電力ネットワーク、四国電力送配電が高圧発電機車を出動させて応急送電を実施。北海道NWと北陸送配電、沖縄電力が浸水したエリアで低圧引き込み線の断線修理を行い、健全性が確認できた顧客宅へ個別送電を行った。

 幹事会社を務めた中国NWの上田明正執行役員・配電部長は報道陣の取材に対し、「今回の訓練で洗い出された課題を各社のマニュアルに落とし込み、さらに連携を強めて質も上げ、より迅速に復旧できるよう努めたい」と意気込みを示した。

 共同訓練には送配電10社と陸自、中電工のほかにローソン、イオン、西日本高速道路(NEXCO西日本)、KDDIなどの関連事業者も参加。支援物資の受け入れや通信の切り替えなどに取り組んだ。

 送配電10社は2020年7月に非常災害時の早期復旧に向けた連携の在り方をまとめた「災害時連携計画」を策定しており、この計画に基づいて今回の共同訓練を行った。20年11月にも共同訓練を実施したが、当時はコロナ禍だったためオンライン会議を開き、実際の訓練は各社が個別で取り組んでいた。

電気新聞2024年11月21日