銅の価格高騰を背景に、太陽光発電所から銅線ケーブルが盗まれる被害が深刻化している。被害額が1億円を超えたり、盗難による発電の停止で売電収入の損失が推定1億円以上に及んだりするなど、事業に支障を来している実態が、太陽光発電協会などの調査で明らかになった。同協会は、金属スクラップ取扱業者の登録制導入や罰則強化など、法規制の検討を国に提起する。
◇1億円の収入減
7月、太陽光発電協会と大手の再生可能エネルギー発電事業者などでつくる「再生可能エネルギー長期安定電源推進協会(REASP)」の会員企業19社にアンケートした結果、被害を受けた発電所数は313カ所あった。5500キロワット以上のメガソーラーで最も被害が大きかったケースでは、盗まれた銅線ケーブルの長さは16キロメートルに及び、被害額は1億1200万円だった。盗難からの復旧工事に伴う長期の発電停止により、売電収入の損失額が推定1億円以上に上った事例もあった。
50キロワット以上2千キロワット未満の高圧では、約6キロメートルのケーブルが盗難に遭い、被害額5100万円のケースが被害の最も大きな事例だった。発電停止による売電収入の損失額は、推定9500万円に上る事業者もいた。
非鉄金属企業のJX金属によると、銅建値は5年前に比べ2倍超に上昇。2019年7月に1トン当たり68万8100円だった価格は24年7月、同154万400円に値が上がっている。銅の高騰に連動し、ケーブル盗難が急増しているとみられる。
太陽光発電協会は「盗まれた銅線ケーブルを買い取る業者がいるから、被害が絶えない」として、「買い取らせない出口対策が必要」と訴える。アジア諸国で導入されている金属スクラップ取扱事業者の登録制をはじめ、買い取り時の身分証明書提示、取引の記録・保存の義務化、罰則強化などの対策をとる必要性を訴える。
◇保険受けられず
同協会によると、損害保険会社が盗難保険や発電停止による損害額の補償を引き受けない事態が生じている。太陽光発電事業を新規に始めようとしても、損保に加入できないため、金融機関から設備投資や運転資金に対する融資を受けられなかったり、既存事業で融資が打ち切られたりする案件が既に出始めている。
国は、30年度に太陽光を1億350万~1億1760万キロワットを導入する目標を掲げていて、達成には3千万~4400万キロワットの導入が必要となる。同協会は「ケーブル盗難が深刻な危機的状況が続けば、太陽光の新規導入が進まない上、既設発電所の事業継続も困難になる」と懸念する。与党や関係省庁に対し、規制強化の働き掛けを進めている。
電気新聞2024年9月19日
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