◆微生物燃料電池実証、農業スマート化へ期待
発電菌は自然の土壌に広く存在しており、植物が光合成で作り出した有機物を吸収・分解する際に電子を放出する特性がある。この土壌に電極を設置すれば、負極から正極へ電子が流れ、電気を取り出すことができる。この仕組みを微生物燃料電池と呼ぶ。
東京農工大は微生物燃料電池の技術に着目し、ベンチャー企業「RING―e」を設立して実用化・商用化を目指している。他の研究機関では水田など水の多い環境での研究が進んでいるが、東京農工大の技術は比較的乾いた土でも利用できる点が特徴となっている。

◆発電菌広く分布、山間部でも電気
今回の実証では、RING―eが製作した微生物燃料電池を、四国電力グループの伊方サービス(愛媛県伊方町、池田修司社長)が運営する同県八幡浜市、伊方町のみかん園地に設置する。微生物燃料電池は、昼夜や天候に関わらず、土壌と植物があれば永続的に電気を得られるのが特徴。人が頻繁に行くことが難しい場所で利用するのが有効と考えられることから、山間部の急傾斜地が多いみかん園地で実証を行うことにした。
実験室レベルでは、微生物燃料電池で温度、湿度などのセンサーを動作させ、20分ごとにデータを1キロメートル先へ飛ばすことに成功している。農地でも安定的に電気が得られることが実証で確認できれば、今後より多くの電気を集められるよう研究を進め、センサーやカメラなどの電源として農業のスマート化・省力化に活用したい考え。また、土砂崩れや水害の予兆を検知するセンサーなどにも利用できる可能性があるとしている。
電気新聞2024年8月26日