青森県、むつ市、事業者による協定書と覚書の締結式(左から村松社長、小早川社長、高橋社長、宮下知事、山本市長)

 青森県、むつ市、リサイクル燃料貯蔵(RFS、青森県むつ市、高橋泰成社長)は9日、使用済み燃料の中間貯蔵施設「リサイクル燃料備蓄センター」(むつ市)の操業開始を前に安全協定を締結した。自治体側の手続きが終わり、RFSは9月までを目標とする中間貯蔵施設の操業開始へ前進した。東京電力ホールディングス(HD)柏崎刈羽原子力発電所からの使用済み燃料が搬入されれば、全国初の発電所敷地外での燃料受け入れとなる。

 協定書では使用済み燃料の貯蔵期間を50年間とすることを明記。安全確保と環境保全を図るため、平常時での保管状況に関する報告など原子力防災体制を充実することや安全性向上に継続的に取り組むことを記載した。

 3者に加えRFSに出資する東京電力HD、日本原子力発電は同日、燃料輸送など3項目の覚書も結んだ。覚書は出資2社に対して、(1)使用済み燃料に関わる責任ある輸送と適切な措置(2)RFSへの安全協定各項目の順守に対する指導・助言(3)事業実施が著しく困難となった場合の施設外搬出を含めた措置――を求める内容とした。

 青森県の宮下宗一郎知事は締結式後の会見で、協定締結による県への影響について「国のエネルギー政策に貢献できる。その一点に尽きる」と回答。「乾式貯蔵による安全性や核燃料サイクル全体の柔軟性を高める観点で操業に意義がある」と強調した。むつ市の山本知也市長は中間貯蔵施設の操業で「安全を担保する関連産業の雇用に期待する」ほか、県の共創会議を通じて地域振興に取り組む考えも示した。

 RFSの高橋社長は操業開始へ「安全最優先で進める」とし、キャスクの保管状況に関して「放射線データや挙動について当社ホームページで適宜公開する」方針を示した。

 HDの小早川智明社長は「柏崎刈羽から最初のキャスク搬出について行政手続きを進める。中長期の利用計画は現時点で示せないが、固まりしだいお示しする」と説明。原電の村松衛社長も「当面はPWR(加圧水型軽水炉)使用済み燃料のキャスクについて許認可手続きに対応し、しかるべき時に具体的内容をお示しするよう努力したい」と述べた。

 ◇メモ/中間貯蔵施設

 原子力発電所から出される使用済み燃料を再処理するまでの間、一時的に貯蔵・管理しておくための施設。原子力発電所で発生した使用済み燃料は一定期間、貯蔵プールに保管する。その後、金属キャスクと呼ばれる容器に同燃料を収め、中間貯蔵施設へ輸送する。

 日本原燃が青森県六ケ所村で使用済み燃料の再処理工場を建設しているが、現在の使用済み燃料の貯蔵状況を鑑み、発電所外での貯蔵施設が必要となった。

 2000年6月の原子炉等規制法改正で発電所敷地外での貯蔵が認められたことから、青森県むつ市が東京電力へ中間貯蔵施設の立地に向けた調査を要請。03年には同市が施設誘致を表明した。

 東電と日本原子力発電は05年10月に青森県、むつ市と立地協定を結び、同年11月にリサイクル燃料貯蔵(RFS)をむつ市に設立した。08年には「リサイクル燃料備蓄センター」の建設に着手した。

 同センターの最終貯蔵量は5千トン。当初は3千トン規模の貯蔵建屋を建設し、その後2棟目を建設する計画だ。年間約200~300トンを4回に分けて搬入する予定。貯蔵建屋の使用期間は50年間で、操業開始から40年目までに搬出の協議を行う。

 使用済み燃料の中間貯蔵施設に関しては、中国電力が山口県上関町の同社所有地での設置を検討し、地質などの調査を行っている。

電気新聞2024年8月13日