政府は11日、GX(グリーントランスフォーメーション)2040ビジョンの策定に向け、産業構造転換と産業立地を論点とした詳細議論を本格的に開始した。GXやデジタル化、経済安全保障といった課題に対応するため、産業の再編や企業の規模拡大を促す。脱炭素電源の地域偏在に合わせて立地誘導し、エネルギーの大規模な地産地消を推し進める方針も掲げた。
内閣官房が事務局を務める「GX実現に向けた専門家ワーキンググループ(WG)」を7カ月ぶりに再開し、論点を示した。GX2040ビジョンはエネルギーに加え、産業構造と産業立地、市場創造の大きく4つの視点で検討を進める。
産業構造の検討の前提として、経済波及効果の高さや経済安全保障の観点から、製造業を発展させる方針を共有した。サービスやデジタルの産業を推進する主要国でも、製造業回帰に動く。重要部品の半導体のほか、鉄鋼や化学などの素材、エネルギーや完成車を例示して「フルセットのGX型サプライチェーン」を構築すると打ち出した。
さらに、GX化と同時にデジタル化を進めることが既存事業の国際競争力向上につながると指摘。そのためには大規模で高度な計算資源と、量・価格の両面で安定したクリーン電力が必要とした。
日本は現在、エネルギーコスト高を遠因として投資先が海外に向かい、海外生産比率が増加傾向にある。国内投資が低調なため古い設備で生産性も低く、賃金が上がらない悪循環に陥っていると分析した。
気候変動対応といった地球規模の課題を対処するには、迅速な経営判断や経営規模の拡大が必要と唱えた。英米やドイツは上場企業数を減らしながら国内総生産(GDP)を伸ばした一方、日本は上場企業数が増えGDPは停滞中だ。独占禁止法の運用見直しやGX経済移行債を活用しながら産業再編と経営規模拡大を促す。
産業立地の論点として、クリーンエネルギーの大規模な地産地消を掲げた。送電などエネルギーの輸送コストを抑え、電気から水素といった転換ロスも減らす。再生可能エネルギーや原子力発電が特定の地域に偏っている現状を踏まえ、国全体で最適な立地の設計が不可欠とし、支援策と規制を整備する。
WGは非公開で開催された。8月上旬に再度開き、各論点を深掘りする。夏にGX実行会議(議長=岸田文雄首相)も予定しており、WGでの議論を反映する。
電気新聞2024年7月12日
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