◆昼に太陽高電力貯蔵→夕に最大供給力

 環境意識が高い米国・カリフォルニア州で、系統用蓄電池の存在感が増している。4月16日の夕方ピーク時間帯(午後7~9時頃)には、蓄電池による放電が600万キロワットを超え、同時間帯で最大の供給力になった。蓄電池が最大供給力になるのは史上初。CAISO(カリフォルニア州の独立系統運用者)エリアでは、太陽光急増などに対応するため、既に700万キロワット以上の系統用蓄電池が接続済みだ。温室効果ガス排出削減に向け、再生可能エネルギーの受け皿としての役割が強まっている。

 ◇700万キロワット超接続

 広大な土地や日射量を背景に、CAISOの太陽光導入容量は、1900万キロワットを超えた。日中に太陽光による電力を貯蔵し、夕方の需要ピーク時に放電することで、電力需給を安定化させている。春の特定の気象条件下では、系統用蓄電池による放電が、日が傾く夕方に最大供給力になるまで成長した。この現象は4月16日以降、5月末までに計14日間で発生した。

 これまでカリフォルニア州は、太陽光の出力変動にガス火力で対応してきたが、クリーンエネルギー導入を推進する州政府の方針により、リチウムイオン蓄電池へのシフトが進む。2045年をターゲットに、電力の脱炭素化を進めるカリフォルニア州公益事業委員会(CPUC)、エネルギー委員会(CEC)が系統用蓄電池導入を促す仕組みを導入している。

 ◇ガス火力退出へ

 カリフォルニア州の再エネ導入量割当制度(RPS)では、45年末までに州内全ての小売事業者に対して、販売電力量の100%を再生可能エネルギーで賄うように義務付けている。CAISOは、45年のピーク需要想定6190万キロワットに対して、今後1500万キロワットのガス火力が廃止されると想定。その場合には、6964万キロワットの太陽光、4881万キロワットの蓄電池導入が必要だと試算している。

 今回、蓄電池が最大供給力になったことで、45年に向けたカリフォルニア州の取り組みが着実に進捗していることが示された一方、負の側面も存在する。海外電力調査会は、カリフォルニア州の電気料金が全米平均を大きく上回る一因として、蓄電池の導入を挙げる。

 料金規制が残るカリフォルニア州では、蓄電池による電力の調達コストが各社の固定料金に反映されており、「電気料金は長期的に上昇を続けるとの見方が強い」と分析する。慣性力や同期化力を持たない非同期電源の大量導入で、系統安定性が低下する問題もかねて指摘される。

 ガス火力から蓄電池への転換を急ぐカリフォルニア州。急激な変化の中で、ひずみが生まれないか――。日本として注視する必要がある。

電気新聞2024年6月10日