貫通した導水路トンネルで記念撮影する関係者
貫通した導水路トンネルで記念撮影する関係者

 関西電力は4日、富山県南砺市の境川発電所(2万4200キロワット)の発電電力量増加に向けた引水設備工事のうち、岐阜県白川村の加須良川と富山県の境川ダム(桂湖)を結ぶ導水路トンネルを貫通させた。長さ約1.2キロメートルのトンネルは、掘削中に大破砕帯に阻まれるなどして工期を1年延期。黒部ダム建設時の「黒部大町トンネルを彷彿(ほうふつ)させる」(水力事業本部水力エンジニアリングセンター加須良川引水設備新設工事所)難工事となったが、貫通により引水設備工事は節目を迎えた。

 加須良川引水設備工事のうち導水路トンネルは、加須良川と境川ダムの山岳部を結ぶもの。全長約1.2キロメートル、幅2.4メートル、高さ2.55メートルのトンネル構築に向け2016年10月に着工した。冬季を除く24時間3交代制で、取水口の上口側と下口側の両側から掘り進めていた。

 掘削工事は軟弱な地盤に加え、毎分14立方メートルの湧水や幾度となく破砕帯に阻まれ、17年度中の貫通を断念。工期を1年延長し、課題解決へ施工会社や下請トンネル工事会社と協議を重ね、現場一体で18年中の貫通を目指した。約2年の工事を経て12月4日午前8時57分、両側から掘り進めたトンネルが貫通した。

 加須良川引水設備工事は、庄川支流の加須良川に高さ7.8メートル、幅60メートルの取水えん堤を新設し、導水路トンネルを通じ富山県営の境川ダムまで水を導くもの。工事により同ダム下流の境川発電所の年間発電電力量は、約2300万キロワット時増加する。一方で、加須良川下流の成出発電所、新成出発電所では水量が減少し発電電力量は計約600万キロワット時減るが、差し引きの発電電力量は約1700万キロワット時増加する。

 取水えん堤は、11月9日に完成。同社は今後、導水路トンネルの覆工などを進め、19年12月の竣工を計画する。

電気新聞2018年12月6日