ABBは11月に同社として初めて日本を対象とした今後25年間の電力・燃料市場予測リポートをまとめた。発送配電の各分野における中長期的な設備形成や、それに基づく電力市場価格、輸入燃料価格などの推移をシミュレートするソフトウエア群を活用したもの。電力関連市場に特化して価格予測まで行うのが特徴で、北米では半年に1度リポートを提供している。日本でも事業者が設備投資を判断する材料などとして活用を見込む。

 電力・燃料の市場予測では、ABBがエネルギー・ポートフォリオ・マネジメント(APM)と総称して展開するソフトウエア群を活用する。その一つは中長期的な発電・送変電設備の容量推移を複数のシナリオに基づいて予測可能。発電燃料や電力の市場価格のほか、電力系統における混雑度の予測に活用することができるソフトもある。

 ABBはこれらのソフト自体も提供しているが、ソフトを使ったシミュレーション結果のみを知りたい顧客に対してはリポートを提供している。これまでも北米や欧州の市場を対象にしたリポートは提供してきたが、日本を対象としたのは今回が初めて。

 今回の日本市場の予測は基準となるベースシナリオのほか、2030年の再生可能エネルギー比率22%を達成する大量導入時、既設原子力発電所の全基稼働時、燃料価格の高騰時といった3つのシナリオで実施した。

 例えば再生可能エネルギーが大量導入されるシナリオでは、40年時点で卸電力市場の平均価格がベースシナリオに比べて7%低下すると予測。ガス火力の負荷も年間で6%低下するといった分析結果を示している。

電気新聞2018年12月10日