24年を経営ビジョン実現に向けた転換点と位置付けた中部電力の林社長

 電力各社トップが4日、2024年の仕事始めに当たってあいさつした。24年はBWR(沸騰水型軽水炉)再稼働が見込まれるなど、大きな節目の年となることから、原子力関連の発言が目立った。コンプライアンス問題への対応が一区切りし、24年は各社が財務基盤回復や成長に向けて、大きく踏み出す年になりそうだ。地元への半導体工場立地を、大きなチャンスと捉える声も聞かれた。

 今年は、新規制基準に適合したBWRが初めて再稼働する見通しだ。女川原子力発電所2号機の再稼働を控える東北電力の樋口康二郎社長は、「震災の被害を受けたBWRの再稼働という歴史に残る一大プロジェクトを一丸で成し遂げたい」と強調。中国電力の中川賢剛社長は、島根原子力発電所2号機の再稼働に向け、「様々な不具合も想定されるが“安定稼働に向けた大事な改善事項”とポジティブに受け止め、丁寧に対処してほしい」と社員に呼び掛けた。

 このほか、日本原子力発電の村松衛社長は「原子力関連のイノベーション、技術活用は今後、さらに進展、具体化していくと確信している」と述べ、原子力の将来に明るい兆しが見えつつあるとの認識を示した。

 23年度は各社とも好業績が見込まれ、次の一手が注目される。関西電力の森望社長は「脱炭素社会の実現に向けた取り組みを加速させるとともに、多岐にわたる事業領域で新たな価値やサービスの創出に挑む」と強調。中部電力の林欣吾社長からは「収益の大幅な改善を実現できたが、環境は劇的に変化し続けており、油断はできない」との声が聞かれた。東京電力ホールディングス(HD)の小早川智明社長は、「福島への責任を全うする上でとても重要な一年になる」との認識を示した。

 半導体など地元への工場立地を成長機会と捉える声も目立った。北海道電力の齋藤晋社長は「千載一遇のチャンス。安定したエネルギー供給とともに、脱炭素などのニーズに応えられるようグループ一丸で対応する」と強調。九州電力の池辺和弘社長は「大きなチャンスとして電化のメリットや当社の環境価値をPRする」と述べた。

 また、各社トップは1日の能登半島地震に言及。犠牲者に哀悼の意を示すとともに、被災地の電力供給や設備復旧に向けて奮闘する社員らに感謝した。地元が被災した北陸電力、北陸電力送配電は、社長の年頭あいさつを取りやめた。

電気新聞2024年1月5日