東京電力ホールディングス(HD)と中部電力、日立製作所、東芝の4社が原子力事業の提携に向けて協議していることが分かった。4社は21日までに今後の具体的な提携に向けた覚書を交わした。関係者によると「4社それぞれが互いに意見交換しているのは事実」とした上で、「まずは協力しやすい原子力の保守事業から(提携)という可能性がある」としている。

 4社はBWR(沸騰水型軽水炉)の運営・建設で共通している。その一方で、BWRプラントを巡る国内の事業環境には厳しさもみえる。このため、将来的にBWR陣営で人材や技術をどう維持していくのかが大きな課題となっている。

 目下の経営課題として、東電HD、中部電力ともに原子力発電所の再稼働が見通しにくい状況にある。加えて、福島第一原子力発電所の事故以降、原子力発電所の規制基準が厳格化され、電力各社は安全対策に多大な費用を投じている。

 一方、日立は英国でのABWR(改良型沸騰水型軽水炉)新設プロジェクトについて、現地子会社への出資などを含め、協業先を模索している。東芝は経営危機の引き金ともなった海外原子力プラントの建設事業から撤退した。

 4社それぞれが重い経営課題を抱える中、各社は提携によってBWRに関する技術の維持や人材確保、競争力強化につなげたいという思惑がある。

 今後、4社による協議が本格化し、まずは原子力プラントの保守管理を手掛ける合弁会社の設立などを検討していくことが想定される。また、日立が手掛ける英国ABWR新設プロジェクトや、東電HDの東通原子力発電所の新規開発などでも連携を模索し、BWRの技術維持や人材確保につなげていく可能性もある。

 一方で、原子力事業の統合は原子炉等規制法との関係もあり、新設案件以外での実現は難しいとの見方がある。

電気新聞2018年8月23日