Jパワー(電源開発)は8日、KDDIと共同で、エナリスに対する株式公開買い付け(TOB)を11月から実施すると発表した。両社で最大240億円を投じ、TOB成立後にKDDI59%、Jパワー41%の議決権保有比率にすることを目指す。卸電力事業が主力のJパワーは収益を安定化させるため、間接的な小売りを含む電力販売の多様化を進める。今回、KDDIと電力事業で協業する枠組みとして、VPP(仮想発電所)など先端的な技術に強みを持つエナリスと提携し、将来の布石にする狙いだ。

 発行済み普通株式と新株予約権を公開買い付けで取得する。買い付け価格は1株700円に設定。KDDIは現在、エナリス株を29.9%保有。今回の買い付けでは最低でも20.7%以上積み増し、KDDI保有分を含め50.6%以上とすることを目指す。

 Jパワー、KDDI、エナリスの3社は8日付で業務提携。Jパワーは卸電力取引市場価格の予測などの知見をエナリスに提供し、電力調達や需給管理に生かしてもらう。エナリスはKDDIやJパワーが手掛ける小売電気事業者向け需給管理業務の一部を受託する。

 Jパワーは100%子会社の「Jパワーサプライアンドトレーディング」(旧ベイサイドエナジー)のほか、立ち上げ中を含め新電力3者の需給管理を手掛けている。夜間や休日の需給管理業務をエナリスに委託する予定だ。

 Jパワーは電力小売り全面自由化を受け、多様な電力販売方法に取り組む方針を中期経営計画で掲げている。相対契約による長期の卸供給でも、卸電力取引市場価格に連動する契約もある。ただ、卸市場が安価に推移すると収益性が低下する。市場価格が安い際は小売りの収益性が上がるため、卸と小売りの比率を縮めて収益を安定化させたい考え。

 電力小売市場では、デマンドレスポンス(DR)やVPPなど電力需要を制御する技術で差別化を図る動きが活性化している。需要家との接点が少ないJパワーは、エナリスと組むことで需要家側の技術を取り込みたい考え。今回の提携内容に、相対での電力卸供給は含まれないという。

電気新聞2018年8月9日