hakusho 原子力委員会は7月、2017年度版の原子力白書を取りまとめ公表した。昨年7月に閣議決定した「原子力利用に関する基本的考え方」をベースとした構成に変更し、推進側、規制側双方の視点を記載した。特集では、原子力分野のコミュニケーションの在り方を重点的に説明。東京電力福島第一原子力発電所事故から7年が経過した現在も原子力への不信・不安が根強いと指摘し、信頼を構築するため、「科学的・客観的事実に基づいた情報体系の整備」「国民、利害関係者とのコミュニケーション活動」が必要と提言した。

 岡芳明委員長は同日開いた定例会議で、白書の意義について「行政のアーカイブであると同時に、原子力委が発信してきたことへのフォローも兼ねている。原子力推進・反対、それぞれの立場の人に読んでもらいたい」と述べた。

 白書は今年3月までの取り組みを対象とする。プルトニウム利用に関しては、基本方針改定の検討作業が進んでいる段階で「長期的に保有量を削減することが必要」と指摘するにとどめた。エネルギーシナリオの中での原子力の役割にも言及。長期安定的な原子力利用は地球温暖化や経済、電力安定供給の面から重要で、自由化した環境下でもその特性を生かすべきだとした。

 原子力利用の前提となる国民からの信頼回復に関しては、科学的情報や客観的根拠に基づき理解を深め、意見形成できる環境整備が不可欠と強調。原子力の知識基盤強化に向け、「軽水炉長期利用・安全」「過酷事故・防災等」「廃止措置・放射性廃棄物」のテーマで産業界、研究機関、大学をまたぐ連携プラットフォームを立ち上げたことにも触れた。

 原子力白書は1956年から2010年まで継続的に発刊していたが、福島第一事故や原子力委の見直しで休刊。福島第一事故の教訓・反省、原子力を巡る環境変化を踏まえた政府の取り組みを説明するため、昨年再開した。

電気新聞2018年7月6日