栃木県の送電線に設置したセンサーユニット。大きさは直径16センチメートル、長さ30センチメートル

 東京電力パワーグリッド(PG)は、センサーを使って送電線途中区間の過負荷を制御する装置を国内で初めて導入した。栃木県真岡市の6万6千V送電線にセンサー電送型過負荷保護リレー(OLR)を設置し、運用を始めた。太陽光発電の導入が増えると、送電線途中区間が過負荷になるおそれがある。数十億円規模といわれる送電線の増強工事を行わなくても対応できるようになる。写真は設置されたセンサーユニット[/caption]
 東京電力パワーグリッド(PG)は、センサーを使って送電線途中区間の過負荷を制御する装置を国内で初めて導入した。栃木県真岡市の6万6千V送電線にセンサー電送型過負荷保護リレー(OLR)を設置し、運用を始めた。太陽光発電の導入が増えると、送電線途中区間が過負荷になるおそれがある。数十億円規模といわれる送電線の増強工事を行わなくても対応できるようになる。

 センサーを住友電気工業、OLR装置を東京電設サービスとそれぞれ共同開発した。電送には電波と光ファイバーを利用する。2020年8月に開発に着手し、今年1月までに現地に設置。実証を経て5月29日に運用を開始した。

 再エネの導入拡大に伴うN―1電制の取り組みなどにより、送電線に設備許容値以上の電流が流れる過負荷への備えが必要になっている。現在は電源変電所出口端の計器用変流器(CT)で測った電流をOLRで検出し、発電出力を抑制するか遮断することで設備損壊を防ぐ仕組みを講じている。

 だが、配電用変電所を経て負荷を落としていく途中区間は、CTでじかに電流を計測することができない。負荷の流れが一方向だった時代は推定で対応可能だったが、太陽光発電の導入拡大によって逆方向にも電気が流れるようになり、こうした手法を取ることが難しくなっている。

 そのため、「途中ネック」と呼ばれる送電線途中区間の過負荷に対応するには、電線の張り替えや鉄塔の建て替えなど送電線の増強を行う必要があった。この場合は多額の費用がかかるほか、増強が終わるまでに数年~十年以上を要する可能性もある。東電PGなどが開発したセンサー電送型OLRを使えば費用は数千万円で済み、対応期間も1年程度に短縮できる。

 栃木県は太陽光の導入量が増えており、1地点で数万キロワット規模を連系する計画もあった。低コスト・短期間での導入を可能にするため、東電PGの系統運用部と工務部がセンサー電送型OLRの開発を進め、実装にこぎ着けた。

 開発に当たった東電PG系統運用部系統保護グループの松原好宏主任は、「この装置を導入することで大規模な設備対策を回避し、発電事業者の連系を低コストで速やかに実施できるようになる」と効果を説明する。

電気新聞2023年6月28日