三井E&Sマシナリーは、ドイツ企業と共同で原子力発電所の廃炉作業向けマニピュレーター(腕型ロボット)を開発した。世界で初めて位置センサーが不要な制御システムを採用。従来の2倍以上の放射線量に耐えられることに加え、配線数も半減した。マニピュレーターの交換頻度が半減するため、廃炉作業に伴って発生する汚染廃棄物も削減できる。同社は東京電力福島第一原子力発電所などへ採用を働き掛ける方針だ。
福島第一の廃炉作業に用いるマニピュレーターには、耐放射線性の仕様目標として1時間当たりの線量率で10キログレイ、集積線量で2メガグレイという水準が示されている。
三井E&Sはこの目標達成に向け、ドイツのヴェリッシュミラーエンジニアリング社と約3年間かけて新しいマニピュレーターを開発。全部品の耐放射線性を向上させるとともに、世界初の位置センサー不要な制御システムを実現している。
この結果、耐放射線性は集積線量で従来機種の1メガグレイから2メガグレイへ向上し、機器に必要な配線数も半減した。耐放射線性については照射施設で全部品にガンマ線を照射した後、試験で絶縁特性や機械強度などに劣化がないことを確認している。
今回開発した電気機械式マニピュレーターは油圧や水圧を使う方式と違ってアームの関節部分に配管がない。電気配線による回転制限もないため、動作範囲を大きくとることが可能だ。
また上腕や下腕、手先などの部位ごとにモジュール化されている。このため用途に応じてアームの長さを変更したり、モジュールごとに遠隔で着脱したりできる。福島第一だけでなく、他の原子力施設の廃炉でも活用を見込んでいる。
ヴェリッシュミラーエンジニアリング社はドイツの原子力用マニピュレーター専業メーカー。日本では三井E&Sマシナリー(旧三井造船)と約30年間の提携関係にあり、原子力施設に220基以上を納入している。
電気新聞2018年4月24日
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