PSEGのホープクリーク発電所とサレム発電所(By EaglesFanInTampa at English Wikipedia [Public domain], via Wikimedia Commons)
PSEGのホープクリーク発電所とサレム発電所(By EaglesFanInTampa at English Wikipedia [Public domain], via Wikimedia Commons)

 米国ニュージャージー州議会は、州の発電量の約4割を占める原子力発電を経済的に支援し、再生可能エネルギーの発電量比率を2030年に5割に引き上げる法案群を賛成多数で12日(日本時間13日)可決した。電源の「脱炭素化」が目的。卸電力取引市場の価格下落で苦境に陥っている原子力の環境価値を認め、市場の枠外で対価を与える制度の導入を目指している。同様の制度はニューヨーク州とイリノイ州で導入済み。ニュージャージー州知事が法案に署名して成立すれば、3州目となる。

 法案群は原子力と再生可能エネを温室効果ガス大幅削減への両軸に位置付けるもの。同時に、気象で変動する風力発電や太陽光発電の出力安定化に向け、30年までに200万キロワットの蓄電池の導入を目指す。

 シェールガス革命による天然ガス価格の下落や、可変費が極めて安い再生可能エネの導入拡大で、米国の既設原子力発電所は卸電力市場でのコスト回収が難しくなり、運転期間を満了する前に閉鎖を決めるケースが相次いでいる。ニュージャージー州の大手エネルギー会社PSEGも、2年以内に支援が得られなければ州内の発電所2基の閉鎖を決断する見通しだった。

 同州議会が可決した法案には、原子力が持つ環境価値を金銭化する「ゼロエミッション証書(ZEC)」の導入が盛り込まれた。証書の費用は電気料金で回収する。同州は対価が年間3億ドル(約320億円)になり、顧客に同41ドル(約4300円)程度の電気料金が付加されるとの見通しを示している。

 ZECの導入判断には、州の原子力発電量比率の高さが影響している。ニューヨークは約3割、イリノイは約5割に達する。卸電力市場の枠外で支援する州の動きは、あくまでも市場改革で課題の解決を狙う一部の地域送電機関(RTO)の動きと対照的だ。イリノイやニュージャージーなどを管轄するRTOのPJMがそれに該当する。

 PJMは、現在の卸電力市場の価格決定手法に不備があり、結果的にベースロード電源のコストが市場価格に適切に反映されていないとして、市場の枠外で同電源に与えている補填金を減らす代わりに、コストを的確に反映するための手法改革の議論を進めている。

電気新聞2018年4月17日