認定取消の可能性も

 
 FIT(固定価格買取制度)認定済みの「低圧営農型太陽光発電」で、事業者が経済産業省に出す必要がある農地転用許可証の提出数が低迷していることがわかった。営農型のFIT案件は、認定年度から3年以内に農地転用許可証の取得、提出を求めている。ただ2020年度にFIT認定した10~50キロワットの低圧営農型太陽光発電3559件のうち、約9割にあたる3216件(昨年11月時点)が転用許可証を提出していない。資源エネルギー庁は原因を調べて提出数を増やしたい方針だが、3年が経過すれば認定を取り消す可能性も出てくる。

 農地転用許可は、農地を駐車場や住宅地にする場合などに必要となる。転用時の許可取得は農地法で定められており、申請書は都道府県知事や農林水産相、指定市町村長に提出する。

 農地に太陽光パネルを置く営農型太陽光発電は、再生可能エネルギー導入拡大策の一つとなる。本来、低圧太陽光発電のFIT認定には「少なくとも30%の自家消費」が求められている。ただ営農型は、自家消費の比率が低くても災害時における自立運転と周辺住民への給電コンセントの提供という条件があれば、FIT認定している。

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 経産省が営農型のFIT認定の条件としていたのが、認定後の農地転用許可証の取得と許可証の提出だった。だが、低圧営農型太陽光発電は20年度に限らず21年度の認定案件も許可証の提出数が伸びない。21年度は4070件認定したうち、昨年11月段階で3744件が未提出だった。

 この状況を踏まえてエネ庁は任意のアンケートを認定事業者に配布。回答を得た673件のうち、許可証を経産省に提出したのはわずか8件、取得したものの未提出だったのが51件、許可証の未取得が614件だった。未取得のうち許可の申請を出していないのは515件で、申請の遅れも目立った。

 認定から3年間が農地転用許可証の提出がなくてもFITのルール上で稼働できる猶予期間となる。ただ、早ければ今年4月にも猶予期間が切れるFIT案件が出てくる。エネ庁は、17日の調達価格等算定委員会で営農型太陽光発電の事業状況を説明。未提出の原因を詳細に調査する方針を示した。

 経産省幹部は、農地転用許可を得ている好事例も1割程度あるとして「ベストプラクティスを整理して発信していきたい」と話す。猶予期限が切れた案件の認定取り消しについては「可能性がある」としつつも、「まずは改善命令。聴聞で事業者の状況を把握する」と、即時の認定取り消しには慎重だ。

 FITに関するルールの周知は、事業規律を強化するためにも不可欠。23日召集の通常国会では、事業規律の強化に関するFIT法改正案を提出予定だが、再エネ主力電源化には各種ルールの順守が大前提だ。

電気新聞2023年1月19日