規制回帰で先行き不透明

 
 新電力の低圧契約口数が2千万口を突破した。2016年4月に小売り全面自由化が始まり、3年2カ月後の19年6月に1千万口に到達。そこから3年3カ月で2千万口を超えた。ただ、足元では燃料費調整額に上限がある規制料金への切り替えが増えており、右肩上がりに増加してきた新電力の低圧契約口数が初めて減少に転じる可能性もある。大きなマイルストーンを達成したが、先行きには不透明感が漂う。(旭泰世)
 

これまで右肩上がりに増加

 
 電力・ガス取引監視等委員会がまとめた9月分の電力取引報で、2千万口突破が明らかになった。旧一般電気事業者の小売部門の低圧契約口数は6851万7983口で、新電力の低圧契約口数は2002万6840件だった。新電力のシェアは契約口数ベースで、前年度比2.4ポイント増の22.6%となっている。


 新電力は日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場の安値などを背景に、規制料金よりも安いメニューや他サービスとのセット割、ポイントサービスとの連携などを強みにして、新規顧客を獲得してきた。低圧契約口数は16年9月に159万3498口、17年9月に449万2433口、18年9月に751万4834口、19年9月に1094万8357口、20年9月に1451万1090口、21年9月に1768万7654口と右肩上がりに増加している。

 しかし、ロシアのウクライナ侵攻などをきっかけに、燃料価格やスポット市場価格が高騰すると、自由料金で燃調上限を撤廃する動きが活発化。旧一般電気事業者の小売部門が提供する規制料金は、燃調上限が維持されているため、燃料価格が高騰して燃調上限に達してからは自由料金よりも割安になった。新電力にとって規制料金よりも安いメニューを提案するハードルがかなり高くなった。
 

リスク高まり販売強化できず

 
 実際に新電力の低圧契約口数の伸び幅は縮小してきている。5月は前月比30万829口増だったが、6月は同17万3822口増、7月は同7万2942口増、8月は同8万4853口増、9月は4万7764口増と、徐々に低迷の兆しがみえている。

 さらに、全低圧契約口数の約3分の1を占める東京エリアでも、規制料金に戻る流れが本格化していく見込みだ。東京電力エナジーパートナー(EP)が提供する規制料金が、9月に燃調上限に達したためだ。今後公表される10月分以降の電力取引報では、新電力の低圧契約口数が減少に転じる可能性も十分にある。

 東北電力、北陸電力、中国電力、四国電力、沖縄電力は23年4月実施に向けて規制料金の値上げを申請しており、燃調上限を引き上げることで、規制料金と自由料金の燃調価格差の解消を図っている。ただ、規制料金の値上げ後、新電力がすぐに販売を強化するとは限らない。

 むしろ、新電力からは「積極的に顧客を取ろうという雰囲気ではない」という声も聞こえる。スポット市場の変動性が大きい中、相対電源で確保した供給力を超える需要を抱えてしまうと、需要が増える時間帯に同市場から高値で電力を調達せざるを得ないからだ。

 新電力は市場連動型など赤字リスクの低いメニューを除き、販売強化に踏み込めない。スポット市場の価格が低下するか、相対電源を十分に確保しない限りは、新電力が本格的な反転攻勢に出ることは難しいだろう。低圧契約件数が再び増加傾向に戻るにはまだ時間がかかりそうだ。

電気新聞2022年12月27日