飛騨変換所の心臓部に当たるサイリスタバルブは普段なかなか見ることができない

 

地元の濃飛バスとコラボ

 
 白川郷で知られる岐阜県北部の飛騨高山で今年、インフラツーリズムが始まった。中部電力パワーグリッド(PG)と濃飛バスのコラボレーション企画として、5~10月に計3回実施。中部電PG、Jパワー(電源開発)、NEXCO中日本の施設や白川郷を巡った。地域の新たな魅力を発信することで、交流人口の増加につながると期待される。記者も今年最後のツアーに同行した。(林史子)

 今年最後のツアーは10月21日に日帰りで実施。老若男女を問わず幅広い層の17人が参加した。中部電PG飛騨変換所、NEXCO中日本の高速道路保全施設、白川郷、Jパワー御母衣発電所・御母衣ダムの順に訪問した。
 

東西の電気つなぐ施設、心臓部を見学

 
 飛騨変換所は、中部エリアを担当する記者として一度は訪れたかった施設。ここを介して東西の電力が融通され、安定供給を支えていると思うと感慨深い。飛騨電力センター変電課の洞浩幸・専任課長が案内し、直流―交流60ヘルツの変換を行う「心臓部」(洞氏)のサイリスタバルブへ。外部のほこりを持ち込まないよう、白衣を着てエアシャワーを通った上で室内に入り、見学した。

 洞氏は変換所構内を巡りながら、えぼし鉄塔など珍しい鉄塔が見られるポイントも紹介。「変換所より鉄塔の方に興味津々な方もいます」と話して笑いを誘うなど、終始和やかな雰囲気だった。

 続くNEXCO中日本の高山保全・サービスセンターでは、雪対策の特殊車両や防災対策室を、白川郷では、かやぶき屋根を火災から守る放水銃の点検に合わせて特別に放水訓練を見ることができた。

 ツアーの最後はJパワー御母衣発電所。御母衣電力所の佐々木康行所長と頭本忠夫所長代理が案内した。ダム湖底に沈む場所から「荘川桜」を湖畔に移植した経緯を伝える映像の視聴後、発電所やダム、電力館を見学。地下の発電所に向かう「インクライン」に乗るのが目的という参加者もいた。
 

見どころ満載、担当者「笑顔が何より」

 
 ツアー全体を通して見どころ満載だったため、日帰りとは思えないほどの充実感が得られた。活発に質問が出るなど、参加者の楽しそうな様子も印象的だった。

 ツアーを企画したのが、中部電PG高山営業所で飛騨地域コミュニティサポートインフラ推進担当を務める今井和成さんだ。準備を始めたのは昨年8月。自社設備の飛騨変換所だけでなく、他社のインフラ施設や地元の観光名所も行程に組み込み、地域の魅力を広く発信したいと考えた。それに賛同した関係者と検討を重ね、実現にこぎ着けた。

 今井さんは「普段は見られないような設備をご覧頂きたかった。お客さまの笑顔が何よりうれしい」と顔をほころばせる。ツアーは継続して「徐々に飛騨高山地域の伝統にしていきたい」という。来年は、荘川桜が花盛りを迎える4月頃の実施を目指している。

電気新聞2022年11月22日